敗者の足跡 

 

 

 

 

 何故、こんな僕が優勝したんだろう。

 

ここは死骸の山が転がっている死の島だ。

 

いくら人が住んでいなくっても、此処で人が死んだ事は事実なんだ。

 

 

 

 

「壇くん、君が優勝した事は政府も驚いているよ。」

 

榊先生は僕を無表情で睨んでいた。

 

 

 

「正直、死亡者が出なかったら次に首輪を爆破されるのは君だったんだよ。」

 

 

 

 淡々と語る声が僕の脳に駆け巡っている。

 

彼は自分の生徒が死んでも何とも思わないのだろうか。

 

それとも感情なんて持ち合わせてないのかもしれない。

 

 

 

「私はウチの跡部が優勝すると思っていたのだけどね、

 

彼は一番信頼していた樺地に殺されてしまったよ。

 

銃で眉間を一発だ。

 

彼の絶望に満ちた顔を君にも見せてあげたかったよ。

 

皮肉なもんだ、彼にとっては唯一の友とも言えたのにな。」

 

 

 

 そんな生徒の苦しむ姿を見るのを好む彼は僕に淡々と語りかけてきた。

 

 

「榊先生。」

 

 

青学の竜崎先生が地図らしき物を榊先生に手渡した。

 

 

「これで全員分です。」

 

 

榊先生は只その紙を見つめた言った。

 

 

 

「それでは彼を案内します。

 

先に船に戻っていて下さい、竜崎先生。」

 

 

 

先生は何も映していない様な目で言う。

 

 

「敗者の足跡を見に行こう、それが優勝者のこのゲーム最後の使命だ。」

 

 

彼の後に続いて島の隅から歩き始めた。

 

 

「榊先生、貴方は全てを見ていたのですか?

 

この3日あまりの全部の殺し合いを・・・・。」

 

 

榊先生は此処で何もなかった様に言う。

 

 

「そうだ、全てを見ていた。

 

それが私の使命だからな。」

 

 

 最初に着いた場所は海に近い場所、此処では青学の菊丸さんと大石さんが

 

ナイフで刺し合った様だ。赤い血が草の上で固まっている。

 

 

「一番最初の被害者だ、あんなに信頼し合っていた者同士で殺し合うなんてな。」

 

 

 血の匂いと人の腐敗する匂いが混ざって普通なら吐きそうに成るが

 

僕は成らなくなってしまっていた。

 

この状況で3日も過ごしたのだから。

 

 

 

「彼等は何故、殺しあったのだと思う?」

 

 

榊先生の質問に僕は答え様と辺りを見回した。

 

 

「菊丸さんが大石さんのナイフを手に取って・・・大石さんは

 

慌てたんでしょうね、菊丸さんに殺されると・・・。

 

そして奪い合う形で揉み合って・・・・。」

 

 

 

「そうだな、私もそう思うよ。」

 

 

 

「死に直面したら人ならまず悲しい気持ちに成るそうだ。

 

でもこのゲームの優勝者はその気持ちが無くなってしまうそうだ。

 

無くなると言うよりも壊れてしまうのだろうな。」

 

 

 

榊先生の背中はとても無防備で目の前に居る殺人者を警戒もしていない。

 

 

 

「榊先生・・・何故、貴方は僕達をここへ連れて来たのですか?」

 

 

 

「それは・・・・。」

 

 

 

「答えて下さいよ、先生・・・・。」

 

 

僕はまだ持っていた銃絵を向けた。

 

 

 

「私は殺して欲しかったのかもしれないな。

 

今まで何百と言う生徒をこの島で殺し合いをさせてきた。

 

否、私が殺したのだ・・・・。」

 

 

まるで僕を見ているみたいだった。

 

だって榊先生はゲームの優勝者だったからだ。

 

 

 

「僕も貴方みたいに人を殺しても何も感じません、自分の殺した仲間を見ても何も。

 

敗者の足跡なんて所詮は負け犬の死体でしかないんです。」

 

 

 

「そうだな、私もそう思うよ。

 

でもいつか気が付く、人の大切さを。

 

人が簡単に死んでしまう事を知っての生活は辛い。

 

誰も愛せない、自分を置いて死んでしまうんじゃないかと言う恐怖も。」

 

 

 

「僕はもう誰も愛せないし、何にも夢中になれない、懺悔することもない。

 

ただ何も感じない世界で生きる事を選びます。

 

だって僕は勝者だから・・・・・。」

 

 

 

 涙を流す榊先生に僕は銃を渡した。

 

彼はどんな気持ちで生きて来たのだろう・・・。

 

勝者の僕に、勝者の彼に敗者の足跡は何を意味しているのだろうか?

 

 

 

「僕は生きます、貴方がした様に生きていきます。

 

それが勝者の使命、たとえその勝者がなんの感情もない人とは呼べない人間でも。」

 

 

榊先生の足元に血が散らばった。

 

 

 

「何か思い入れでもあったんですか、先生?

 

この生徒たちに・・・・。

 

でも先生、感情を持ったら負けなんですよ。

 

それはこのゲームの参加者全員に言える事なのに

 

先生は自らその結末を選んだんですね。」

 

 

 

 空が青いうちに家に帰りたい、家族は受け入れてはくれないだろうけど。

 

でも僕は孤独も切なさも悲しさも喜びも感じないから平気だ。

 

強く生きよう、それは敗者の足跡にも言える。

 

お前たちは強く生きた、戦った、只運悪く負けてしまっただけ。

 

このゲームは戦いが終わっても続く、さっき榊先生が死んだけど

 

僕も一生苦しんで生きていくんだ。

 

 

 

さぁ帰ろう、辛さに耐えられないなら死んだらいいさ、

 

だって僕達のゲームは続いてるから。