呟きヒトツ

 

 

 

午前12時、二人の男は只の一度も口を訊かなかった。

 

普段からあまり話をしない二人だったが、この時の静けさは

 

普段の騒々しい部室からは想像もつかなかった。

 

 

 

「なぁ宍戸、さっきの発表で

 

生き残ってるのは俺とお前と青学の手塚だけやて。

 

そりゃな、三日も戦ってきたんや、

 

生き残ってる方が恐ろしいわ。

 

それだと俺らは恐ろしい部類の人種に入ってまうけどな」

 

 

 

宍戸と忍足は背中合わせで座っている。

 

そこは少し前に降っていた雨を避けるために選んだ木の下で、

 

木に着いた雨がぽつぽつと忍足と宍戸の頭に落ちてくる。

 

二日前からの殺し合いで傷付いた忍足の頬に雨が落ちると

 

忍足はそれを腕で拭った。

 

 

 

「忍足、俺たちの命も残り僅かだな。

 

それを知っているからこそ、俺は手塚もお前も怖い。

 

あんなに人を殺してきたのに俺は最低だな。

 

仲間を裏切ることがこんなにも辛いってことに、今になって気が付くなんて」

 

 

 

「人は自分の愚かさに気が付くのは愚かな行為が犯した後なんやで。

 

誰にでも過ちはあるけどな、俺たちのしたことは取り返しがつかへん。

 

それは宍戸も分かってるやろ?」

 

 

 

「あぁ、痛いほど分かっている。

 

それなのに冷静でいられる自分が怖いんだ。

 

まるで夢を見ている気分だ、死にそうにないからかな。

 

それとも・・・・・」

 

 

 

宍戸の眉毛の上に残っている傷は跡部につけられた物だ。

 

その傷は約15センチにも及ぶが、傷は浅かった。

 

跡部は宍戸の鎌を避けるために自分のバタフライナイフを

 

振り上げたさいに宍戸の顔に傷をつけてしまったのだ。

 

それに怯んだ跡部は宍戸の鎌の餌食になった。

 

首を思いっきり刺された跡部の血が今でも宍戸の両手には残っている。

 

 

 

「跡部はお前に殺されるなんて思ってもなかったやろうな。

 

岳人も、俺に殺されるなんて思わなかったやろう・・・」

 

 

 

「死にたくないのにな・・・殺さないなんて・・・・。

 

それが普通の人間なんだろうな」

 

 

 

 

その言葉を最後に宍戸は口をきかなくなった。

 

忍足もそれを察したのか、雨が完全に上がった下を歩いていった。

 

 

 

「・・・好きだったよ、友達」

 

 

「・・・大好きやったで、皆」

 

 

 

忍足がその場を離れてから5時間後、宍戸のいた木の下の周辺は

 

火の海に包まれた。

 

禁止区域に指定されていた場所から数十メートルしか離れていなかった

 

せいだろう、何かに爆弾の火薬が原因で引火したのだろう。

 

 

 

「・・・あぁ、もう終りを告げるんだ」

 

 

 

最後に残した言葉は誰にも届かなかった。