青い空を恋う者

 

 

 

 

 

 

「・・・怖い、怖いの・・・母さん。」

 

 

 

一人の少女が蚊の鳴く様な声で言った。

 

それは髪の長い少女、竜崎桜乃である。

 

今は深夜12時、辺りは1つの灯りも無く、

 

風が木を揺らす音しか聞えない。

 

桜乃は廃工場の入り口付近で一晩を明かそうとしていた。

 

 

 

 

「おい、誰か居たか?」

 

 

 

 

桜乃は突然した声に驚き懐中電灯を落としてしまった。

 

 

 

 

「あっ・・・。」

 

 

 

 

ころころと外に転がって行く懐中電灯を桜乃は追った。

 

 

 

 

「待って!」

 

 

 

 

声を出した事に気付かないほど桜乃は慌てていた。

 

さっきの誰かの声にも気にせず外へと向かった。

 

 

 

「・・・懐中電灯・・・なんで灯りが点いてないの?

灯りが点いてたら、直ぐに分かる筈なのに・・・。」

 

 

 

懐中電灯はさっきの衝撃で電池が抜けてしまっていた。

 

 

 

「・・・暗い・・・怖いの・・・。

青い空が見たいよ・・・今すぐに・・・。」

 

 

 

桜乃は自分の懐中電灯を手探りで探しはじめた。

 

草の少ない所でも真っ暗な中から物を探すのは困難だ。

 

しかし、桜乃は諦めずに手で草を書き分けて探した。

 

 

 

「・・・そんなに遠くには行っていないはずなのに・・・。」

 

 

 

桜乃の呟きに溜息が混じる。

 

 

 

「・・・おいっ!お前・・・探してるのはこの懐中電灯か?」

 

 

 

桜乃の背後で男の声がした。

 

確かに後ろには灯りが点っている。

 

 

 

「そうです・・・。

ここで失くしてしまって・・・困ってたんです。」

 

 

 

桜乃は振り返らずに言った。

 

男は後ろから言った。

 

 

 

「この懐中電灯とお前の持ってる武器、交換しないか?

こんな暗闇じゃ行動出来ないだろう?

安いもんだろ、武器の1つくらい・・・。」

 

 

 

桜乃は思いもよらない声に言葉を失った。

 

 

 

「・・・武器と交換したら俺はすぐに此処から

離れてお前を攻撃しない・・・。」

 

 

 

 

桜乃は精一杯の声で言った。

 

 

 

 

「私、分かりました。

武器を貴方に渡します、だから・・・・。

だから、その懐中電灯を返してください。」

 

 

 

 

桜乃は自分のデイバッグの中に入っていた鎌を手にその手を後ろに伸ばした。

 

 

 

 

「鎌か・・・。

思ったよりもいい武器じゃないね・・・。」

 

 

 

桜乃の震える手から男は鎌を抜き取った。

 

 

 

 

「約束の懐中電灯だ。」

 

 

 

後ろ手に懐中電灯を受け取ると桜乃は恐る恐る振り返った。

 

その男は肩までの長髪で女の様な容姿をしていた。

 

 

 

後ろ姿でも分かる位に彼は油断していた。

 

 

 

相手が弱弱しい女の子という事もあるからだろう。

 

桜乃は懐中電灯を振り上げた。

 

 

 

「んあ〜。」

 

 

 

声は辺りに響き渡った。

 

桜乃の懐中電灯は血まみれで桜乃の足元に転げ落ちた。

 

 

 

「・・・殺しちゃった・・・。」

 

 

 

桜乃の顔にも血飛沫が跳ねていた。

 

 

 

「殺しちゃった・・・殺しちゃった・・・・。」

 

 

 

パニックになりながらも伊武のデイバッグを担ぎその場から走った。

 

 

 

『早く朝に成ればいい・・・。

早く朝に成れば・・・・・、朝に成ったら夢から覚めるから・・・。

全て忘れられるから・・・・。』