明日を迎える意味
何かに感動する事って大切なんだね・・・。
だって何も感じなくなるかも知れないなんて思わなかったから。
感動できなくなった今では涙も枯れてしまった。
誰もが泣けるドラマにすら僕は何も感じなくなってしまった。
そんな中でも少しでも感情を取り戻そうと部屋には常に音楽を流している。
クラシックから最近のヒット曲まで。
明るい曲から暗い曲、でも何かを感じる事なんてない。
部屋の隅で蹲って曲を大音量で流し続ける。
「貞治、そろそろ外に出たらどうかしら?」
大きな音に掻き消される訳でも無く母親の声は自分の耳に届いた。
何も考えられないのに頭の中でその言葉がぐるぐると駆け巡っている。
どうにか返事をしようと声を上げた。
「・・・そうだね、たまには陽に当たるのもいいかも知れない・・・。」
殆ど運動をしなくなった足は中学時代よりも筋肉が衰えている。
元々、読書やインドアな趣味の方が多かったからか
テニスが出来なくても苦痛には成らなかった。
しようと思えば部屋の隅に眠っているラケットですぐにでもできるのに
どうしてもそんな気分にはならなかった。
「図書館にでも行こうかな、あまり人には逢いたくないし。」
最近独り言が多くなってきたのは誰にも会わない所為もある。
“アレ”が終わってから俺は人に会う事を極端に避けていた。
中学を卒業後、大検を受けてからは家に引篭もっている。
現在16歳に成ったけども大学に行く気にもならない。
勉強は相変わらず理系が得意だ。
親も勉強が出来る自分に必要以上に干渉はしなかった。
“アレ”で優勝した所為もあるのかもしれない。
親も自分を恐れているのか・・・・。
図書館の静けさは好きだ。
本を捲る音と古い本の独特の匂い。
子供の声と誰にも邪魔されない空間。
どれも自分を優しく包んでくれる。
ついつい夢中になる。
此処の本を全て読み終わる頃には自分の傷と周りの反応は
少しはマシになっているのだろうか。
社会問題に成っている本がある。
“バトルロワイヤル”
日本の裏社会にはBR法なる法律があるという設定で書かれている本だ。
もちろんフィクションと表記されて売り出されている。
これがノンフィクションであると誰が気付くのであろうか。
この作者は自分が参戦した“アレ”の3年前の参加者らしい。
“アレ”の優勝者にしてはしたたかな人だと思う。
あんな体験をしながらも自分が生きる為にその経験を書くのだから。
自分は早く忘れてしまいたい出来事なのに。
この本は何度も読んだ。
否、読まされたと言った方が正しい。
試合後の人格矯正プログラムで何度も呼んだ。
「すみません・・・。」
本を適当に3冊選んだ。
何て事のない参考書とパソコン雑誌に英語辞書。
今も監視されている、それは背中に視線を感じるから間違いない。
人格矯正は徹底的にされる。
“アレ”の所為で殺人に魅せられる者がいる所為だろう。
何の為の法律なのか分からない。
少し図書館に居たかったがやっぱり自分の部屋が落ち着く。
やっぱり大きな音で曲を流しながら本を開く。
パソコン雑誌を開くと落ち着くのだ。
知識を頭に入れると落ち着く。
変な話かもしれないが勉強している時が一番落ち着くのだ。
ストーリー物の小説を読むよりも何かの知識を得てる時間が落ち着く。
大音量の中で久しぶりに涙を流した。
俺は出口のない牢獄にいるのかもしれない。
逃れられないんだ、一生、この空虚感からは・・・。