未来地図を下さい 

    Please give me a futuer map.

 

 

「私の名前を誰かが呼んだ〜♪

でも私はまだ気付かないふりをしていたいぃ♪

もう時間が無い事に気付きたくないよ、気付きたく無い♪」


 

菊丸英二は自分でも気が付かないうちにテレビで流れていた

歌を口ずさんでいた。

 

 

「未来は儚く、それでも僕等は行く・・・どこまでも、どこまでも♪」

 

 

『大石は無事なんだろうか?

手塚や桃、オチビちゃんも元気にやってるのかな?』

 

 

「もう終わりにしよう、空が僕を呼んでいるから。

未来にはあの空はあるのかな?

僕にはもう理解も出来ない♪」

 

 

菊丸英二はよたよたと隣にあった木にもたれ掛かった。

 

 

「大石・・・もうイヤだよ。

疲れたよ、疲れたよ、帰ってベッドで眠りたい。」

 

 

ガサガサと木の枝を騒がす風を気持ちよく感じながら

静かに菊丸は目を閉じた。

 

 

『俺は今、ベッドで眠っていて・・・、

朝の光が眩しくって目を覚ますんだ・・・

今日の料理当番は1番上の姉ちゃんで、

朝から大騒ぎで調理してるんだ・・・。』


 

 

「英二、逸れてしまったからか・・・・

良くない事が起こる気がする、英二・・・」

 

 

「大石!そんな心配よりも皆を探すほうが先だろう

不二に越前、河村もまだ出会ってないんだから。」

 

 

手塚の声に大石は後ろ髪引かれる思いを振り切り

手塚の後に続いて歩いた。

 

 

【大石!お前がレギュラー落ちってどういう事だよ。】

 

【俺達、絶対優勝するって約束したじゃんか!!】

 

【・・・青学の優勝の為か?】

 

【それなら、大石が落ちなくっても・・・・・。】

 

 

「手塚は俺達の希望だった・・・3年間、ずっと・・・」

 

手塚は大石の呟いた言葉に徐に振り返った。

 

「・・・どうした、大石!」

 

「・・・あぁ、手塚。

ちょっと考え事をな・・・。

もし、帰れたら・・・全国に行けるのかなって考えてたんだ。

俺はレギュラー落ちしてるけど、皆の雄姿が見れたら・・・・。」

 

「大石・・・。

皆で帰ろう・・・皆で・・・・

そうすれば青学を優勝に導ける、俺はそんな気がしている。

こんな状況下でおかしな事かもしれないが、俺は信じている。」

 

「あぁ、俺も信じてる。

青学、否、皆でここから帰ることを

またテニスが出来ることを・・・・。」

 

 

その時、大石の肩にボウガンの矢が襲い掛かった。

 

 

「大石!大丈夫か!?」

 

 

大石の肩を掠めたボウガンの矢は手塚の後ろの木に突き刺さった。

 

 

「おい!待て!!」

 

手塚の声が大きく木霊する。

 

 

「何だ・・・、外しちゃったかぁ。」

 

「・・・・英二・・・・・。」

 

 

大石は目を大きく見開き口を開いた。

 

 

「俺、ずっと考えてて。

考え抜いて決めたんだ。

俺・・・帰るよ、家に・・・・。

人を殺してでも帰る、帰るんだ。」

 

 

「菊丸、よく聞け。

仲間を殺してまで家に帰って何の意味があるんだ?

お前は、お前の答えはそれでいいのか?」

 

 

 

「うわぁぁぁ〜!!!!」

 

 

菊丸が大石にボウガンを向けた。

 

 

【俺は大石が好きだったし、尊敬してた。】

【地味だけど強くて、面倒見が良くって・・・。】

【とても眩しかった。】

 

 

ばしゅっと言うグロテスクな音と共に大石の顔に血が飛んで来た。

 

 

「・・・・英二?」

 

「はぁはぁ・・・・・。

俺・・・死にたくないよ。」

 

 

「それは皆そうなんだ、そう思ってるんだよ、英二。」

 

 

「大石・・・ごめん、俺を嫌いに成らないで・・・。」

 

 

菊丸はそう言うと地面に倒れ込んだ。

 

 

「大石・・・、お前を守る為にはこうするしかなかった。」

 

 

手塚の手には真っ赤に染まったナイフが握られている。

 

 

「手塚が悪いんじゃない、全てはこのゲームの所為だ。」

 

 

「・・・そうだよ、手塚。

俺、よかった。

このまま大石を殺してたら一生悔やんでた。

よかった、手塚が止めてくれて・・・。

手塚が大石の側にいてくれて・・・・。」

 

 

【うらやましかったんだ・・・ずっと、手塚が大石を信頼してる事を】

【大石が手塚を頼りにしてることを】

 

 

「英二、ここから移動しよう。

今から手当てすれば、まだ間に合う。」

 

 

「嫌だ!みんなに嫌われるのは、嫌だ!」

 

「菊丸!?」

 

「皆には言わないで、俺が大石を殺そうとした事。

それにもう、皆に合わせる顔がないよ・・・。

だから、このまま・・・。」

 

「英二、えいじ・・・。」

 

 

【未来地図?それって何?!】

【あぁ未来に冒険の旅に行く時に使える奴?】

【じゃぁそれ、俺じゃなくって大石にあげて・・・】

【きっと喜ぶよ、未来には嫌な事が沢山あるから】

【それでも、生きていて欲しい】

【たった一人の親友だから】

 

【未来地図を下さい】

【彼にあげたいから・・・。】

【俺が壊そうとした命を繋いで・・・。】

 

 

「英二・・・。」

 

「大石、行こう!菊丸の為にも」

 

【大石、未来地図はお前にあげるよ】