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持久戦
「跡部は持久戦勝負が得意なんだ。」
こっちの学校に転入してから、初めて出来た友人に言われた。
“跡部は持久戦で相手を潰すのを面白がってる”
“残酷だぜ、あんな負け方したら”
“だってワザとポイント落として、試合長引かせるんだぜ”
“相手も瞬殺された方がマシだとか思ってると思う”
そんな事を言うギャラリーがうるさくって仕方がなかった。
試合の仕方なんて人それぞれ、誰も強制なんてできない。
「侑士、跡部の本気の試合なんて中々見れないんだぜ。
関東大会の青学戦、楽しみにしてるんだ、俺。」
俺も初めて関東大会で跡部の本気を見た。
強くて綺麗だった、でもそれは本当に残酷な試合だった。
「残酷やね、跡部。
仲間も苦しませながら殺すなんて。
いっそ瞬殺してくれた方が相手は楽なんやで。」
こんな所で初めて跡部のことを言っていた奴らの気持ちが理解できた。
跡部の足元で震えながら刺された腹を押さえる岳人が
なるべく苦しまないようにと思い、跡部に近付いていく。
跡部は顔色1つ変えずに俺を冷たい水色の目で睨みつけている。
「岳人、返してくれるか?
もう勝負は着いてるやろ?」
歩み寄る足音に跡部は何も言わない。
俺の足音なのに誰か違う奴の足音とも聞える。
死にそうになっている岳人に近付くために俺は言う。
「返してくれ、俺の仲間を・・・。」
跡部の持久戦の意味を知ったのはこの後だった。
岳人を抱き上げようと俺はしゃがみ込んだ。
岳人は虫の息だったけれど、俺は必死に看病すれば
まだ生き延びられると思っていた。
「・・・皆、俺の戦いを残酷だと言ったな。
でも俺は残酷なのは今のお前だと思っている。
今、岳人を看病すれば苦しみは長引く、それでもお前が岳人を助けるのか?」
跡部の言葉に俺は何も言い返せなかった。
残酷な殺し方をすると跡部に言っておきながら
俺は残酷に命を延ばすことを考えていたのだから。
「持久戦に持ち込めば、生殺しを見ている気分になるのに
看病しても生殺しをみる気分になる。
何もかも矛盾だらけな世の中だな、忍足。
だから俺は何もかも、分からなくなっている。
残酷に何もかも瞬殺するべきなのか・・・・。
人を殺すことを罪とするなら、俺は何をしているのか。
この状況はなんなのか、それとも・・・・俺は・・・・。」
跡部が崩れ落ちると共に岳人の息は無くなっていた。
何処かで岳人が元気に戻って、普通の生活に戻れるんじゃないかと
思っていたんだ。
でもコレが現実、跡部も俺も何もかも。
“跡部の本気ってなかなか見られないんだぜ。”
そんな言葉ウソや。
今の跡部は誰よりも本気や。
命のこと、今のこと、誰よりも悩んで考え込んでる。
「跡部、岳人は死んでしまったけどな
この現状は変わらないんや。
お前が悩もうと悩まないと現実は変えられへんねん。」
跡部が俺と岳人の元を離れてから、俺は本当に少しの間。
自分なりの持久戦に挑んでいた。
血が滴り落ちる中で俺の意識もだんだんと薄くなっていった。
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