ラッキー

 

 

 

「ついてるって事はそれなりに辛いんだよね。

 

昔から俺ってついてたからさ・・・。

 

亜久津も壇くんも知ってるでしょう、俺って本当はついてなんかないんだ。」

 

 

 

 

暗がりの中、ランプの光が揺れて影を作っている。

 

 

 

 

「運が良いふりをしてきたんだ、本当は裏で必死に努力してさぁ〜。

 

その結果、あいつは努力してないとか言われて・・・。

 

でもね、テニスしてる人達は違ったんだ。

 

俺の努力を見てくれてしかも才能だって言ってくれて・・・。

 

なのに、どうして伴爺は俺たちを裏切ったんだろう・・・・。」

 

 

 

 

 

亜久津は星の出た空を見上げて言う。

 

 

 

 

 

「あいつは元々、政府の人間だったんじゃないのか?

 

俺をテニス部に誘いに来た時、あいつの持ち物・・・見ちまったんだ。

 

中に政府の人間にしか支給されない手帳があった。」

 

 

 

 

 

政府の人間に支給とは黒い革で覆われ、表紙の上の部分に印の押してある物だった。

 

 

 

 

 

「見間違いとかはないんですか?

 

だって光の加減とかで見えなくなるじゃですか、あれ。」

 

 

 

 

「でも俺の目は確かだぜ、それに教室の中で見ただろ。

 

あれを見て本人じゃないなんて誰が言えるんだ?」

 

 

 

 

ランプの火が風で消えそうになる、それを見た壇は慌てて手で

 

ランプの周りを覆った。

 

 

 

 

 

「政府高官って伴爺とか竜崎先生とかを使って俺たちを見張ってたって事?

 

それっておかしくない?

 

だって竜崎先生も伴爺も何年も同じ学校に勤めてるでしょ。

 

それなのに・・・・・。」

 

 

 

 

「政府に急遽雇われたって考える方が自然です。

 

前の学校は栃木だったです。

 

そう考えると何ヶ月も前から雇われてたと考えた方が辻褄が合うです。」

 

 

 

 

 

壇はランプを持って寝袋の脇に置いた。

 

 

 

 

 

「また明日考えようか、明日も殺し合うしかないし。

 

それに寝不足で集中力鈍るなんて嫌だしね。」

 

 

 

 

 

千石たちは中テントの中に入って眠った。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、千石!」

 

 

 

 

 

誰かが千石の名前を呼んだ。

 

だが千石は目を覚まさない。

 

 

 

 

「千石清純、起きないと殺すぞ!」

 

 

 

 

その声に千石は飛び上がった。

 

 

 

 

「・・・・伴・・・爺・・・・。」

 

 

 

 

千石は呆然と伴爺を見続けた。

 

 

 

 

「千石清純・・・お前に渡し忘れた物がある。

 

これは全員に支給された物だ。」

 

 

 

 

伴爺はそう言い終わると千石の首輪を手で覆った。

 

 

 

 

「千石くん、これは絶対に秘密です。

 

いいですか、この首輪には盗聴器が仕組まれています。

 

この盗聴器で政府は貴方達をランダムで攻撃するんですよ。

 

そう爆発させて・・・・。

 

首を爆発させても生き残るくらいの爆発力なので苦しんで死にます。

 

・・・否、私の伝えたいのはこんな事じゃない。」

 

 

 

 

伴爺は千石の首輪を抑えたまま座った。

 

 

 

 

「伴爺、何で来たの?」

 

 

 

 

千石の疑問に伴爺は直ぐに答えた。

 

 

 

 

「それはね、私の運命はもう残り少ないからですよ。

 

私は後半年で死にます。

 

それは一年も前から分かっていました。

 

政府はそんな私に目を付けたのです・・・。」

 

 

 

 

伴爺の目から涙が溢れていた。

 

 

 

 

「政府が私にこの案を持ち掛ける時、

 

彼らは私がテニス部の顧問である事を彼らは知っていました。

 

私はこのゲームを精一杯に否定すると彼らは言いました。

 

【貴方の命を絶つなら1人の命は助けてあげましょう】と。」

 

 

 

 

「なんでそんな事・・・。」

 

 

 

 

「私には夢がありました。

 

それはプロテニスプレイヤーを世に出す事。

 

それが最高の夢でした、けど私の教えた生徒は私のテニスの教え方で

 

どんどんテニスを嫌いに成っていきました。」

 

 

 

 

伴爺の声が掠れ始めた。

 

 

 

 

「そんな時、中学校の監督をしてみないかと誘いがあったんです。

 

私は正直悩みました。

 

私がテニスを教えたら子供達もテニスを嫌いに成ってしまうんじゃないかと・・・。

 

でも以外にも皆テニスを好きに成ってくれて・・・。」

 

 

 

 

「どうして、どうして俺のところに・・・。」

 

 

 

 

「千石くんなら、私の夢を叶えてくれると思ったんです・・・。

 

それに貴方はラッキー千石です、この試合に勝たなければいけません。

 

私はすい臓のガンに成ってしまいました。

 

この試合が終わったら私を消そうと思ったのでしょう・・・。

 

それでも子供の命を救いたいと・・・君の命を救いたいと・・・・。

 

本当は亜久津くんも壇くんも南くんも

 

東方くんも室町くんも助けたかったんですが・・・・一人しか助けられませ

 

ん・・・。」

 

 

 

 

「なんで・・・なんで・・・・。」

 

 

 

 

「それが大人なんです、君も大人になれば分かりますよ。きっとね。

 

政府は誰一人として信じてはいません、それはみんな知っています。

 

だから、この首輪を離したら私を殺しなさい・・・。」

 

 

 

 

千石の首輪から伴爺の手が離れた。

 

周りは薄暗く、風の音しかしなかった。

 

 

 

 

「千石くん、私を・・・・。」

 

 

 

 

伴爺は自分の胸を指差し言う。

 

 

 

 

「殺せ!千石!!」

 

 

 

 

それと同時に千石は伴爺の胸に飛び込んだ。

 

 

 

 

「伴爺・・・なんでだよ、何で・・・・。

 

俺なにも分からないよ・・・。」

 

 

 

 

 

涙が地面に落ちて千石は崩れた。

 

引き抜いたナイフは血に染まってしまった。

 

 

 

 

「分からなくっていいんですよ、でも貴方は生きて下さいね。

 

私の夢、頼みましたよ・・・。」

 

 

 

 

 

「千石清純、怪我はないか?」

 

 

 

 

後ろから男の声が聞えた。

 

 

 

 

「榊先生ですか、僕なら平気ですよ。」

 

 

 

「伴田先生に殺された生徒が出た様だが・・・。

 

しかし彼は何故、生徒を・・・・。」

 

 

 

 

声が出なかった、政府の人間と疑った俺は馬鹿かもしれない。

 

 

 

 

「伴田先生は狂ってしまったのかもしれない。

 

人は死ぬ事を恐れるからね・・・。」

 

 

 

 

伴爺は死ぬ事なんて恐れなかった・・・。

 

 

 

 

「その末期癌、政府の人間が仕組んだんでしょう?先生。」

 

 

 

「それは私はしらない、癌になるなんて事普通じゃありえないだろう。」

 

 

 

 

だって伴爺は政府に・・・。

 

 

 

 

「千石くん・・・。」

 

 

 

 

榊は千石の首輪を押さえた。

 

 

 

 

「伴田先生は癌なんかではない。

 

ずっと健康だった。

 

私達はこのゲームが終わったらカウンセリングをされるんだ。

 

もちろん優勝者と共にね。

 

でも彼は自分の生徒が死んで自分が死なないなんて

 

苦痛以外の何でのなかったのだろう。

 

でもプログラムを破壊しようとする者を殺したらその者は試合を免除できる。

 

彼はこれに掛けたのだろうな。

 

自ら他の者を殺し、自分の生徒に・・・・。

 

おめでとう、君はこのゲームを逃れた・・・。」

 

 

 

 

榊はそっと首輪から手をどかした。

 

 

 

 

「千石清純、伴田先生は亜久津仁、および他の者を殺したのだね。

 

そして君は伴田先生を殺した、プログラムの破壊者を君は殺した。

 

君のバトルロワイヤルは免除された、ご苦労・・・。」

 

 

 

 

ラッキーって言っていいのか分からない、でも先生達は俺たちを

 

ちゃんと思っていてくれたんだ。

 

でも、ついてるのかな、俺。

 

今回の優勝者は跡部くんに成った。

 

彼は政府の敷地内に俺が居た事を驚いていた。

 

 

 

 

 

「何で・・・お前が・・・。」

 

 

 

「俺、免除されたんだ・・・。」

 

 

 

「そういえば、お前の名前・・・呼ばれなかったな。」

 

 

 

「そうだよ、呼ばれなかった。

 

だって俺の殺したのは伴爺だったから。」

 

 

 

 

ガタンと重そうな扉が開いた。

 

此処は政府の敷地内にある建物、壁一面真っ白で何もない。

 

 

 

 

「伴爺は何で俺を助けたのか・・・。」

 

 

 

「千石清純、お前に手紙だ。」

 

 

 

何も書いてない封筒を開けた。

 

 

 

 

「伴爺からだ・・・。」

 

 

 

 

“千石くんへ

 

これを読んでるという事は今回の私の作戦が上手くいったって事でしょう。

 

貴方に託したい事は夢だけではありません。

 

それはこの国の政府の事、この国の政府は次の学校を

 

ランダムに探しているのではありません。

 

政府の利益に基づいています。

 

たとえば総理の息子、彼の学校は絶対に選ばれません。

 

政府の子供は選ばれないのです。

 

こんどのBRは仙台、そこの何処かの学校で行うでしょう。

 

貴方はBRの免除者なので色々と政府が付いて周ります、これだけは

 

気を付けて下さい。

 

 

 

 

榊先生、竜崎先生には近付かない事。

 

それと優勝者には。

 

 

 

 

最後に私の吐いていたウソの事です。

 

嘘とは癌の事、実は私は健康です。

 

でも貴方の事を考えると末期も同然だったので意味ないですが。

 

私はこの1年貴方達を騙すのに必死でした。

 

でも政府からは逃げられない、ですから貴方に託したんです。

 

私の殺した、山吹の生徒達をどうか・・・幸せに・・・。”

 

 

 

 

「千石清純、これは私達だけの秘密だ。

 

政府の中では人を助けるなんてご法度・・・。」

 

 

 

 

跡部は榊の顔を見つめて言う。

 

 

 

 

「そうですね、政府は何を考えているか分かりませんものね。

 

特に榊先生なんて・・・。」

 

 

 

 

僕は何を信じたらいいか分からないみたいです。

 

でもこれだけは言える、

 

先生は夢に向かって欲しかった、でも俺は・・・

 

 

 

 

「千石清純BR実行委員長

 

 

 

 

俺は政府の人間に成り下がった・・・。

 

伴爺の期待を裏切って・・・。

 

伴爺がなんで榊先生に近付くなと言ったか分かった気がする。

 

でも俺は榊先生なんて居なくても政府の人間に成っていた気がする。

 

だって俺って殺し合いが好きなんだもの・・・。