反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

BATTLE.64 神に誓った訳を・・・

DEATH

 

 

 

「・・・俺が拒絶していた訳は、なんなんだろうな」

 

 

 

「お前が望む物は全て手にしてきたからだろう・・・。

 

俺とは違ってな・・・」

 

 

 

跡部景吾は自分の手首に触れていた。

 

 

 

「意味なんてない・・・。俺は俺として生きてきた。

 

沢山の悩みを抱えながら・・・」

 

 

 

立ち上がると、自分と良く似た男の目の前に立った。

 

 

 

「・・・お前は俺に何を望んでいるんだ?」

 

 

 

「何も・・・ただ・・・お前がこの世界で、俺とは違うモノとして生きていく

 

意思があるのなら、俺はそれに協力しようと思う・・・」

 

 

 

そう男が言うと、机の上に置かれた聖書に手を置いた。

 

 

 

『マルコによる福音書一章。七、彼はこう宣べ伝えた。

 

「わたしよりも優れた方が、後から来られる。わたしは、かがんでその方の

 

履物のひもを解く値打ちもない」

 

俺は、この男を超える存在ではない・・・。それはよく分かっている』

 

 

 

 

「なぁ、お前は選ばれた人間が、どんな人生を歩むが知っているか?

 

幸せな世界で、お前が選ばれた人間だったとしたら・・・」

 

 

 

 

「俺は・・・」

 

 

 

 

「ジーザスは、こんな選ばれた人間だ。

 

それを自分でも知っていたから、苦しみにも耐えられたんだ・・・。

 

お前はその苦しみに耐えられるか?」

 

 

 

 

「選ばれたなら・・・」

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 

「君たちは選ばれた人間がどんな人生を辿るか、知らないんだね・・・」

 

 

 

不二周助の言葉を無視して、観月はじめと不二裕太は研究所を後にした。

 

 

 

「・・・僕の傷が、手塚の傷が何を意味しているのか、君たちでは

 

分からなかったようだね・・・。

 

やっぱり、手塚や・・・僕・・・跡部・・・が必要かな・・・」

 

 

 

「不二くん?」

 

 

 

千石清純は不二の背後から、拳銃を突きつけていた。

 

 

 

「・・・千石・・・」

 

 

 

「僕・・・全部話しちゃった・・・。

 

あの世界が何なのかとか・・・。

 

不二くんが行方不明なのも、きっと神様が怒っているんだね・・・。

 

僕があの世界が嫌いなのも、僕が正常だからで、

 

不二くんが、あの世界を守ろうとしているのが以上なんだよ。

 

だって人間の倫理に反しているんだから・・・」

 

 

 

 

「千石・・・、僕を殺したら、どうなるか分かっているよね・・・」

 

 

 

「知ってる・・・。オリジナルの不二くんは強制的にあの中には戻らなくなる。

 

そして、俺が死ねば、クローンの俺も戻らなくなる。

 

不二くんをあの世界かラ戻すには、技術が必要だけど・・・。

 

不二くんは彼を戻す気があるのかな・・・?」

 

 

 

 

千石が引き金に手を掛けると、不二は目の前の書類を渡した。

 

 

 

 

「これは?」

 

 

 

「それは、僕たちが別れた時に書いたデータだ。

 

完璧に作られたクローンはこの世には存在していない事になっている。

 

それが知れたら、とんでもない事になる。

 

でも博士の目的は違う。

 

医療用のバーチャル世界を作るのが彼の目的だったんだからね」

 

 

 

 

「・・・全ては機密事項ってことだね。

 

僕たちオリジナルの存在も、危なくなったら消すつもりだった。

 

だから、君は博士を殺させた・・・。

 

だけど、君はオリジナルではない・・・。

 

博士に選ばれただけの化け物・・・。僕以上のフリークスだろ・・・」

 

 

 

「千石は、クローンの方が幸せに育ったみたいだね。

 

珍しいデータだよ。君がめちゃくちゃにした世界で千石が幸せだなんてね。

 

自分を苦しめることには抵抗を感じたのかな・・・」

 

 

 

「うるさい!」

 

 

 

千石はカタカタと震わせながら、拳銃を強く不二の後頭部に押し当てた。

 

 

 

 

「あんな世界もクローンもいらない!

 

人間は誰かに幸せを決められる権利なんてない。

 

死んだらそこまでなんだよ?

 

何故無理矢理生かせようとするんだ?!

 

俺は・・・死の自由を奪う研究が大嫌いだったんだ。

 

だからむちゃくちゃにしてやったんだ・・・」

 

 

 

「・・・君が死ねば、千石清純は永遠にこの世界で幸せに暮らせるよ?」

 

 

 

「虚像の世界から、やっと出られたんだ・・・。

 

オリジナルもクローンも全ては人として生きてきたんだ。

 

オリジナルの記憶を持って・・・俺の遺伝子を持った

 

千石清純は一人の人間として生きている・・・」

 

 

 

銃の音が聞こえると、不二は涙を流した。

 

 

 

「・・・大切な人を永遠に失いたくないと思う事は罪なのかな・・・。

 

君を失いたくなかった人はいっぱいいるんだよ・・・千石」

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

「・・・あれ・・・?」

 

 

 

教室で授業を受けている千石は、涙を流していた。

 

 

 

「どうした千石?」

 

 

 

隣の席に座っていた南健太郎は様子がおかしい千石を気遣った。

 

 

 

「いや、なんか悲しくなって・・・。

 

寂しくなって・・・。失いたくないモノが消えてしまったみたいなんだ」