反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

BATTLE.59 負けを認めること

LIVIN ON MY OWN.

 

 

「・・・人はドコから来て、どこへ向かうのか?

 

神は世界を滅ぼすことに、何も疑問も感じていないのか?

 

まぁ、この世界は全て・・・僕の中だけの記憶なのだから・・・

 

そんなこと、神様は分かっていないよね・・・」

 

 

 

 

教室に凭れ掛かっていると、不二周助は孤独にも似た感覚に襲われた。

 

1年前に、弟の裕太が聖ルドルフ学院の寮に移り住んだ時と同じ感覚だった。

 

 

 

 

「・・・どこへ向かっても、この世界からは抜け出せない。

 

どんなに酷い声で喋っているのかも・・・聞えない・・・。

 

この教室から見える道の先にも・・・何もなかったんだからさ・・・」

 

 

 

 

不二の声は誰にも届いてはいなかった。

 

この世界にたった一人の自分以外には・・・。

 

 

 

 

「・・・柳生には分からないだろうね・・・。

 

この世界が僕にとってどれだけ苦痛なものかを・・・。

 

偽者として生きていくには、僕は外の世界を知りすぎていたんだ・・・。

 

この世の全てが何もかもが・・・僕にはただの映像に過ぎないんだからさ」

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 

「・・・千石さん」

 

 

「・・・魔法の薬は効果のない偽物・・・。

 

不二くんは自分がその薬を持ち出すところを黙認していたんだよ・・・。

 

だって・・・その薬はさぁ・・・。

 

僕があの世界を壊すために、少しずつ・・・あの世界に入れていた物なんだからさ。

 

不二くんも、もちろん黙認していたよ・・・。

 

だって自分の偽者がこの世にいるなんて・・・気持ち悪いじゃない?

 

だから、ちょっとイジワルしてみたくなったんだ・・・。

 

でも、アレが完成すれば、君たちは只の実験体に戻る・・・。

 

世の為、人の為・・・そして、僕たちの利益の為にね」

 

 

 

 

千石清純は勝ち誇った顔で、観月はじめと不二裕太を見下ろしていた。

 

 

 

 

「・・・だって、あの不二くんが君たちの行動を見逃しているはずないじゃないか・・・」

 

 

 

「それは・・・不二くんが僕たちを裏切ったと・・・?」

 

 

 

「・・・キミ達の知っている不二くんは死んじゃったんだよ・・・。

 

性格には生きているけど、もう外には出られないって言うのかな」

 

 

 

「じゃあ、外の世界の不二くんは・・・」

 

 

 

「生きてるよ・・・。

 

今も研究熱心で、研究所にこもってるよ?

 

まぁ、キミ達も時期にこの世界から消えるんだから、大丈夫だよ?」

 

 

 

 

観月には目の前にいる男が、千石清純であることを忘れていた。

 

それどころか、顔にはうっすらだが、影ではない黒ずみが出来ていることが

 

確認できた。

 

それじゃまるで、返り血を浴びたような影だった。

 

 

 

 

「・・・千石さんは・・・」

 

 

 

「・・・いらないから・・・」

 

 

 

 

意味深な言葉に、裕太は凍りついた。

 

 

 

 

「・・・いらないから・・・どうしたんです?」

 

 

 

「いらないから・・・ってね・・・」

 

 

 

 

クスクスと笑う千石に、観月はただ顔を覆った。

 

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 

「ここはまるで牢獄だ・・・。

 

脱出のできない牢獄・・・。

 

檻もなければ、冷たい壁すらもない・・・。

 

あまりにも自由すぎて・・・自分のことを忘れてしまう。

 

所詮はモルモットのような・・・もんだから・・・」

 

 

 

 

孤独は人を弱くする。

 

叔父にそう聞かされて育ってきた不二には、今の状況が

 

一番自分を弱くしていた。

 

 

 

「負けを認めることになるから、言わないけれど・・・。

 

僕はこの世界が好きなのかもしれない・・・。

 

でもね・・・この世界で生きるには、僕はすべてを知りすぎたんだ・・・。

 

人の記憶が消えてしまっても・・・僕はあの世界を忘れられないだろう」