反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

BATTLE.55 空を仰ぐ瞳 

LIKE A ANGEL.

 

 

 

 

俺は全てを否定していた。

 

家の外に出ることも、この状況を知ろうともしなかった。

 

何も知りたくなかった。

 

 

 

「・・・なぁ・・・手塚が消えたらしい・・・。

 

不二の言っていたことだから、間違いないだろうな」

 

 

 

それが、どうした・・・?

 

この世界は俺たちの生きて行ける場所じゃないんだから、消えて当たり前だろ?

 

それとも、お前はこの世界で俺たちが生きていけるとでも思っているのか?

 

 

 

「俺はあの世界に入ったことがある・・・。

 

もちろん、お前たちを救出するためにだ。

 

あの世界は・・・脳に直接、全ての記憶や、感覚を与えている・・・。

 

元の博士の研究では、今の不二の研究には適わない・・・。

 

お前たちの記憶が違っているのは、不二の遺伝子を元にしたウイルスのせいだ。

 

アレは・・・博士の過ちともいえる・・・。

 

正しい使用法を間違えた博士の・・・実験だったんだろうな・・・」

 

 

 

俺たちの入れられていた地球は、擬似の世界なんかではなかった・・・。

 

アレは確かに俺の住んでいた俺の世界・・・。

 

なのに、何故、それを否定するんだ?

 

 

 

「まぁ、不二のプログラムならお前たちも、正しい世界で生きていけるだろう・・・」

 

 

 

声が出なかった。

 

正しい世界とは、今ここにいる世界を模倣した記憶のことだろうか?

 

この目の前にいる男の記憶を・・・模倣した奴が俺なんだろうか?

 

戦争をしていた世界でも、アレは確かに俺のオリジナルの記憶のはずだ・・・。

 

どんなに辛い記憶でも、それは変えられない・・・。

 

大切な仲間との記憶だから。

 

 

 

もう一人の俺は、この世界でどんな暮らしをしているのか、

 

俺はまったく知らない。

 

この男が中学テニス界でどの位の地位にいたのかも、

 

全国大会の結果がどうなったのかも、

 

何も知らなかった。

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 

「跡部は日本に住んでた時の記憶あるのか?」

 

 

「・・・まぁ・・・あるぞ。

 

まぁ戦争していた時の記憶だけだがな」

 

 

 

「俺も、日本が崩壊する前に、あの島に集められていたから、殆どないけど・・・」

 

 

 

兵役制度の始まった新日本、神の島の住人は15歳までに、

 

兵役を受ける義務がある。

 

 

 

「俺はドイツに住んでいたからな・・・。

 

何で、日本がこんなことになったのか・・・」

 

 

 

「跡部は知らないの?

 

俺たち、人間の精神状態の実験にされてるんだよ?」

 

 

 

目の前の芥川慈朗の不気味な笑い声に、跡部は目を見開いた。

 

 

 

「どういう意味だ?」

 

 

 

「だって、跡部は外の世界を知ったじゃないか?

 

そこで実験装置が、俺たちの世界だってわかったんだろう?

 

だったら、この世界が全て偽物だってわかってるはず。

 

もちろん、自分自身も偽者だってさ」

 

 

 

教室の中では、ざわざわという音の中で芥川の声が響いていた。

 

 

 

「跡部は認めたくないんだよね?

 

この世界が本物じゃないってことを・・・。

 

だから、外の世界を拒絶している・・・。

 

もちろん、あの世界は偽物なんて認めてくれるわけがない。

 

だから、オリジナルとクローンがお互いをお互いと認知した者は

 

次々と消えていくんだよ・・・。

 

オリジナルごと、存在が抹消されてね・・・」

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 

「おい・・・!」

 

 

 

気が付くと、俺はベッドに寝かされていた。

 

どうやら、話しをしている途中で倒れたらしい・・・。

 

 

 

「気が付くいたか?

 

お前まで、消えるかと思ったぞ・・・」

 

 

 

「その時は、お前も一緒だ・・・」

 

 

 

「・・・そうだな」

 

 

 

ベッドから見上げる空には天使の形をした雲が浮かんでいた。

 

俺を迎えにくる天使のようだった。