反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

BATTLE.52 希望を失った声の持ち主は 

BLACK OUT.

 

 

 

「・・・僕が中の世界で見てきた全ては・・・

 

なんの為の物だったんだろう・・・。

 

たとえ、この世界が滅んでも、僕は悲しみもしないだろうから」

 

 

 

僕は目の前の自分にそう呟いた。

 

彼は微笑みながら、僕を探しに来てくれたのかもしれない。

 

 

 

「今度こそ、さよならだね・・・。不二周助・・・」

 

 

 

何も感じなかった。

 

ただ、血の滴る感触と目の前で自分の世界が壊れていく音がしていただけだった。

 

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

 

「不二くん!何をしているんだい?」

 

 

 

僕はふと我に返った。

 

滴る血液の感覚がなくなり、まだ声変わりのしていない身近な人物の声が聞えた。

 

 

 

 

「・・・手塚・・・」

 

 

 

「不二くん、テニス部の練習は明日だよ・・・。

 

いつまで、コートにいるつもりだい?」

 

 

 

 

「・・・・・・」

 

 

 

 

自分の身に何が起こったのかわからなかった。

 

ただ、確実に身長が縮み、声が高くなっていた。

 

 

 

 

「僕たちは一年生だけど、今日は先輩もいないし、早く帰らないと

 

竜崎先生に怒られてしまうよ?」

 

 

 

 

「・・・戻ってきたのか・・・?」

 

 

 

 

「不二くん・・・?」

 

 

 

 

「いや、手塚・・・。

 

手塚君・・・ちょっとぼんやりしていたんだ・・・。

 

ありがとう、僕も着替えて帰るから・・・」

 

 

 

 

僕はただ、呆然の小さな手塚の背中を見送った。

 

何故、ここにいるのかと自答自問しながら。

 

 

 

 

★★★

 

 

 

 

「ただいま、今帰ったよ」

 

 

 

家族が僕を受け入れてくれるか怖かった。

 

一度、自分を殺している僕を受け入れてくれるのかと。

 

自らの欲望の為に、罪を犯した自分を・・・。

 

 

 

「おかえり、お兄ちゃん」

 

 

 

「・・・裕太」

 

 

 

僕をお兄ちゃんと呼ぶ、弟に少し懐かしさを感じた。

 

中学に入る前の裕太は僕を避けることもしていなかった。

 

一番、幸せな時だったのかもしれない。

 

 

 

 

「やっぱお兄ちゃんはもう、レギュラーになったんでしょ?

 

だって青学だってお兄ちゃんに適う奴なんていないでしょう」

 

 

 

 

ほんの少し、この世界が本当の世界ならいいのにと思っていた。

 

今、どんな状態に自分がいるのかなんて考えたくなかった。

 

 

 

 

「あぁ、でも1人だけ強い1年生がいたよ。

 

小学生チャンピオンだった手塚国光・・・裕太も知っているだろ?」

 

 

 

 

「うん、あの眼鏡の人でしょ?

 

あの人も青学に入学してたんだ。以外だな」

 

 

 

 

「名門の青学でも、今は関東止まり、でも手塚くんがいるから、

 

いつかは全国に行けると思うよ・・・。

 

僕らが、3年生の時・・・とかに期待の新人が入ってきて・・・」

 

 

 

裕太にこれから起こる事を説明していると、自然と涙が溢れていた。

 

これから、全てが失われたこと、もしも自分が外の世界と交信をしなければ、

 

全てが嘘でも幸せだったのではないかと思い始めていた。

 

 

 

「おにいちゃん・・・」

 

 

 

「ごめん、裕太・・・」

 

 

 

僕の世界はどこかが物足りなかった。

 

外に出て、全てを確かめたかった。

 

それが間違っていたのかもしれない・・・。

 

 

 

「裕太、今幸せ?」

 

 

 

「・・・おにいちゃん・・・なんか変だよ・・・」

 

 

 

目の前が真っ暗になると僕は世界の外を見つめていた。

 

ここが偽物の世界であることを気付いていたからだ。

 

突然変わる目の前の景色に、ただ呆然と時がすぎるのを待った。

 

 

 

「僕は間違っていたのかもしれない。

 

外の世界で、僕たちが幸せになるのは無理だったのかもしれない」