反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

 

BATTLE.46 偽物の在り方 FAKE IDENTITY.

 

 

 

「偽物には、分かり易く遺伝子にある特殊な細工をしてあるんです」

 

 

12年前、越前南次郎と妻の輪子は遺伝子提供の説明を受けていた。

 

今、お腹の中にいるリョーマの遺伝子で将来の病気や、将来が

 

確実に安全に、そして幸せになれると知った二人は遺伝子を提供することにした。

 

プロテニスプレイヤーの越前南次郎は、怪我が原因で数年後に現役を

 

引退する事になりうると感付いていた。

 

 

「遺伝子を提供すれば、怪我の治療もし易くなるのか?」

 

 

「もちろんですよ。

 

障害も直せる可能性がありますし、同じ遺伝子ですから

 

白血病や移植が必要な病気になっても、すぐに移植できますよ」

 

 

「それじゃあ、もう一人の子が・・・」

 

 

「彼らはあなた方の子供ではありません。

 

私たちの子供として、この施設で預かることになります」

 

 

「でも、同じ遺伝子なんですよね、それじゃあ私の子では?」

 

 

声を荒げる輪子を宥めるように、南次郎は呟く。

 

 

「それなら、リョーマは怪我をしてもプロであり続けられるんだ。

 

俺みたいに怪我で苦労はしないだろうな・・・」

 

 

「えぇ、もしも腕を失えば移植も可能ですからね」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「リョーマ。

 

今日はラケット握らなくてもいいのよ。

 

だって今日は貴方の誕生日なんだから」

 

 

「4歳になったけど、今からがんばらないとプロになれないからね」

 

 

「ふふ、じゃあもう少し練習したら家に入りなさい」

 

 

あれから4年、越前家はいたって平和だった。

 

日本に一度帰国したのは、クローンであるリョーマをあそこに

 

送り届けるためだった。

 

 

「輪子、今日の飯はなんだ?」

 

 

「今日はオムライスよ。

 

引退してからは、リョーマの相手じゃなくって一人でテレビ観賞なの?」

 

 

「いいんだよ。

 

リョーマは一人で強くなるタイプなんだからさ」

 

 

ソファーに寝転んでテレビを見ている南次郎の背中を見つめると

 

輪子は静かに呟いた。

 

 

「あの子がいなくなってから、貴方変わったわ。

 

しばらく、ウチで預かっていた時はリョーマと一緒にテニスしてたじゃない。

 

もしかして・・・・・・」

 

 

「・・・そうだ、思い出しちまう。

 

アイツはリョーマとは違った。

 

まるで別人だった・・・・・・。

 

テニスの仕方も飯の食べ方もな」

 

 

「私たち、正しかったのよね?」

 

 

輪子がコーヒーカップを手に取ると、底にはリョーマの名前がローマ字

 

表記で刻まれていた。

 

 

「このカップはリョーマじゃなくってあの子の物よ・・・」

 

 

「・・・」

 

 

 

◆◆◆

 

 

「母さん・・・」

 

 

「何、リョーマ」

 

 

越前リョーマはお寺の向かいにある家で、呟いた。

 

 

「またパン?」

 

 

「あら、今日は遅くまで寝てるんじゃなかったの?」

 

 

「今日はアイツと練習するんだよ、ここのコートで」

 

 

輪子は微笑むと目玉焼きと牛乳をリョーマの前に運んだ。

 

 

「あのこは今、壁打ちしてるわよ。

 

今はどっちが強いの?」

 

 

「圧倒的に俺、そんなの決まってる」

 

 

リョーマの自身ありげな声に輪子は笑った。

 

一方、クローンのリョーマは淡々と壁打ちをこなしていた。

 

 

『・・・俺たちの全国は終わってない・・・。

 

もう元の世界には戻れない、もうあんな場所は存在しないけど、

 

何でだろう・・・諦めきれないんだ・・・』

 

 

全国大会を目前に、外の世界へと連れ出された越前は自分の手で

 

掴む事ができなかった勝利にイライラが積もり募っていた。

 

 

「・・・クソ・・・」

 

 

ラケットを地面を投げ捨てると、寺の鐘の側に登った。

 

普段なら父親がサボりながら、金をついているんだろうが

 

今日はいなかった。

 

 

「・・・なんで出てきたんだろう・・・」

 

 

「・・・後悔してるんだ?」

 

 

「まぁね・・・」

 

 

鐘の下で壁打ちを始めたオリジナルの自分に少し嫉妬した。

 

全国大会で優勝を果たし、MVPを手に入れた自分に。

  

 

 

「ねぇ、もしもこの世から自分の大切なモノがなくなったらどうする?」

 

 

「・・・もう無くなったからなんとも言えないかな・・・」

 

 

「・・・俺は何も持っていない状態だから・・・」

 

 

 

『これが偽物の在り方だ』