反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

 

 

BATTLE.43 夢の国 DREAM HOUSE.

 

 

 

 

「ドリームハウスか・・・。

 

確かに夢の家だったな、色んな意味で・・・」

 

 

 

不二周助は2002年11月3日、自宅にて死亡した。

 

薬物でのオーバードーズと、死亡解剖で明らかになった。

 

不二周助は以前から、大量の睡眠薬を服用しており、不慮の事故として処理された。

 

弟である不二裕太はその事実を警察に話した。

 

 

 

「兄貴は以前から、大量の薬品を部屋に持ち込んでいました。

 

俺は寮に入っていましたが、時々帰ってきて隙を見て部屋に入ってましたから、

 

そのことはよく知っています。

 

それに、兄貴宛てに届く小包は、大抵、聞いた事のない薬物でした」

 

 

 

警察での事情聴取が終わった帰り、裕太は夜空を眺めていた。

 

少しずつ歩きながら、空を見上げていると裕太は不二が時々言っていた

 

「空が追いかけてくる」と呟いていた事を思い出していた。

 

まだ幼かった2人には、テニスクラブから帰る道で遊びながら帰っていた。

 

 

 

「兄貴・・・・」

 

 

 

「迎えに来たよ、裕太」

 

 

 

もう一人の兄である不二周助に、裕太は声を漏らした。

 

 

 

「知ってたのか?

 

兄貴が最近、痩せてきていたことに・・・」

 

 

 

「・・・薬の常用も知ってた。

 

だって僕達は同じ遺伝子の元に生まれたんだからさ。

 

それに、一定期間の記憶を共用してる。

 

こっちに来る前の時間は、同じ記憶で生きてきたんだから」

 

 

 

「一定の記憶・・・」

 

 

 

「僕は向こうに居る時から、知ってたんだ。

 

君たちの存在も、全てね。

 

そんな中でも、オリジナルの不二周助の記憶が入り込んできたんだ。

 

知らないわけがないだろう・・・」

 

 

 

二人は夜道を歩きながら、無言になっていった。

 

実の兄を失った悲しみなのだろうか、裕太は涙を流していた。

 

 

 

「本当の兄はここにいるのに、どうして泣くの?

 

僕は元々、一人なんだからさ」

 

 

 

「違う・・・兄貴は・・・兄貴は・・・。

 

兄貴は・・・」

 

 

 

流星群が流れている空の下で、不二は不気味に微笑んだ。

 

 

 

「僕は一人だけで十分なんだよ。

 

誰も知らないだろうけどね・・・」

 

 

 

裕太は自分の頬から手の平に落ちた涙を握った。

 

肌寒い外の風の中で不二は少し途惑った顔をみせた。

 

 

 

「裕太は僕を兄だと思ってくれないのかい?

 

僕はどこで育っても、どこにいても君の兄である事は変わらないんだよ。

 

僕の実弟も君もね」

 

 

 

そう言うと、立ち止まったままの裕太を置いて歩き始めた。

 

後ろで何も言えずにいる裕太に、不二は何も言わず目を伏せて

 

淡々と足を進めた。

 

 

 

「ただいま、今帰ったよ。母さん。」

 

 

 

「周助、母さんは病院よ・・・」

 

 

 

「姉さん、やっぱり母さんは精神的にキツいよね。

 

同じ顔の僕を見るなんてさ・・・。

 

暫くは、知り合いの家に泊まる事にするよ・・・」

 

 

 

「行く当てがあるの?」

 

 

 

「叔父さんの家なら、僕を置いてくれると思うよ。

 

学校からは遠くなるけど、母さんの事を考えれば・・・」

 

 

 

不二がそう呟くと、姉の由美子はほっと胸を撫で下ろした。

 

家の電気が暗く感じるのは、由美子の心の中を感じている所為だろうと

 

不二は思いながら階段を上がり、荷物を積めはじめた。

 

 

 

「ただいま・・・」

 

 

 

裕太が帰ってきたと同時に、不二は自分の荷物を手に階段を駆け下りた。

 

不二の義弟は寮生活をしているため、裕太の部屋は実弟が眠りについていた。

 

深夜11時45分を過ぎていた為、裕太が眠っている事は自然なことだった。

 

 

 

「おかえり、裕太」

 

 

 

「・・・ただいま」

 

 

 

「今日は寮はもう閉まってるんだね・・・。

 

今日は僕の部屋で眠るといいよ。

 

裕太が部屋にいるんだ、ベッドは綺麗にしてあるしね。

 

母さんを頼むよ、裕太・・・」

 

 

 

不二は裕太の側を通り抜けて、家から出た。

 

 

 

「兄貴・・・」

 

 

 

裕太は兄の部屋ではなく、自分の部屋に入った。

 

自分と同じ顔をしているベッドで眠っている少年に目をやった。

 

 

 

「ねぇ、俺はここにいてもいいのかな・・・」

 

 

 

「俺にも分からない・・・」

 

 

 

ベッドで眠っていた裕太は、そう呟くとまた瞼を閉じた。