反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

 

 

BATTLE.41 二人だけの時間

SA YO NA RA

 

 

 

俺が4歳の時、初めて自転車に乗らせてもらった。

 

始めは、母親も祖母も俺が自転車に乗ることを嫌がっていた。

 

一人息子が怪我でもしたらと心配していたのだろう。

 

その頃、父親は忙しく会社と家を行き来していた。

 

一ヶ月に2,3度しか帰ってこない事が多い人だったが、

 

その月は、1週間のうち3日は家にいた。

 

それは研究所と呼ばれる、もう一人の俺がいる場所に向かうためだった。

 

 

幼いながらも俺はその事に気付いていた。

 

メイドがコソコソと俺の話をしている事を知っていたからだ。

 

 

「景吾坊ちゃまの代わりは、いくらでもいるって事かしら?」

 

「まぁ、跡取りが死んでしまったらって事の保健でしょうね。」

 

 

そんな会話を部屋の隅で聞いていた。

 

分厚い扉があるとはいえ、その会話はまる聞こえだった。

 

俺の代わりと呼ばれる子供に逢いに行っている父親に少し反感を持った。

 

 

その事を知ってから俺が死んでしまったり、成績が悪かったら、

 

俺は捨てられてしまうと思って一生懸命に勉強を始めた。

 

代わりの俺とは、きっと優秀な奴なんだろう。

 

滅多に帰ってこない父親が毎日の様に逢いに行っているのだからという

 

思いが俺を勉強やスポーツへの努力に向かわせた。

 

 

「景吾、明日は久ぶりに出掛けてみようか?」

 

 

珍しく父親が俺を誘ってきた。

 

4歳の俺には、それが初めての事の様に感じた。

 

でも、それを俺は拒否した。

 

反発もあったと思う、でも俺が捨てられてしまうのではという

 

恐怖心もあった。

 

 

「いいよ、パパはあの子を誘えばいいじゃん。」

 

 

「あの子・・・。」

 

 

「パパが毎日逢いに行ってる子だよ。」

 

 

父親は悲しい顔をして、俺を見下ろしていた。

 

俺は幼稚園に持っていく工作の飛行機を作っていた。

 

夏休みの間、ずっと一人で作っていた物だった。

 

父親と毎年作っていた工作は、もう自分一人で作るしかないと

 

諦めていた。

 

 

「・・・・」

 

 

無言で父親が立ち去ると俺は、小さな飛行機の羽を折った。

 

もう飛べない飛行機を見て、自分を重ねていた。

 

 

そして数日後、代わりの俺はどこか遠くへ行ったと聞いた。

 

メイドの話では、研究所に入れられたと。

 

その後の父親は俺に構う事もなく、普通に生活してきた。

 

俺が、アイツを連れ出すまでは。

 

 

俺が1歳の頃の写真には、俺が2人写っていた。

 

代わりの俺と俺、父親が代わりの俺に逢いに行っていた事

 

を恨んだ事もあったが、再会した2人はあまりにも残酷だった。

 

代わりの俺はこの世の全てを否定して、部屋に閉じこもった。

 

それが俺の本当の姿なのだろうと思った。

 

この弱さをなくしてくれたのは、誰でもない代わりの俺だった。

 

 

「強さを手に入れたからか、俺はこのままでは

 

いけないと思ってお前を連れ出した。」

 

 

「俺はあの世界で死ぬのがお似合いだったんだ。」

 

 

俺達は離れてしまったから、お前はそんなに弱いのだろうか。

 

跡部景吾は確かに、強く輝かしい存在になったが、それは

 

所詮飾り立てた姿に過ぎなかったのかもしれない。

 

 

「俺はお前が嫌いだった。」

 

 

「・・・・・。」

 

 

俺はそう言い残すと、自分の部屋から出て行った。

 

自分の本当の姿があまりにも痛々しかったから。