反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

BATTLE.37 再生

MAKIMODOSHI.

 

 

 

 

「やぁ、君たちが来てくれたから研究も捗ってるよ。

 

千石くんに不二くん、手塚くんに跡部くん。」

 

 

白衣を着た男はこの計画を持ちかけてきた男だ。

 

自分達のクローンを研究対象として、モルモットにしている。

 

自分には被害はないが、不二は少し心地よくなかった。

 

不二たちが5歳の時にこの実験所にクローンたちは閉じ込められた。

 

それ以前は政府の施設に預けられていた。

 

名前はクローンもオリジナルと同じ名前で呼ばれていた。

 

この実験を始めた男は子供達を身寄りのない子供達と偽り、

 

まんまと政府を騙し通した。

 

この実験は政府関係者の中でも、この男と数人の研究員しかしらない。

 

 

 

「博士、中の子たちは生きているんですよね。」

 

 

 

「あぁ、君たちと変わらない生活をしている。

 

しかし、母親も父親も実際には存在しないのだけれどね。

 

食べ物もちゃんと同じ物を与えているよ。

 

それができなくっても、頭にはソレと同じ物を食べたと認識しているはずだ。」

 

 

 

「僕たちは14歳になりました。

 

来年には中学も卒業の予定ですが、あの子たちも同じように?」

 

 

 

「もちろんだ、実験はそれをなさなければ意味はなくなる。」

 

 

 

地球の形をした実験所に博士と呼ばれる男が何やら細工を始める。

 

少し放れた場所に設置してある操縦機の様な物で色々と弄り始めた。

 

窓ガラス越しに見つめると不二は呟く。

 

 

 

「これで、何の意味があるんです?」

 

 

 

「少し、プログラムが狂ってしまっているんだ。

 

彼らを送り込んだ時に何故か戦争が始まってしまってね。

 

日本は殆ど消滅してしまい、彼らは神の島と呼ばれる島に移住している。

 

そして、その被害にあったのは、手塚くんのお母さんだ。

 

その所為か、西暦もずれが生じた。

 

しかし、それ以外は全て上手くいっているんだ。」

 

 

 

跡部が自分のポケットから、一枚の写真を取り出した。

 

同じ顔をした男の子が写っている。

 

目元のほくろは今と変わっていない。

 

 

 

「・・・跡部、君はあまり深く考えない方が良いよ。

 

あの世界でも人は幸せに暮らせるはず、なんだから。

 

心配することはないと思うよ。

 

だって生命確認装置は作動しているんだから。」

 

 

 

跡部は写真を握り締めて操縦室の外へと出て行った。

 

それを見た千石も跡部の後に続いた。

 

手塚と不二は警戒心の欠片もない男に背後から忍び寄った。

 

 

「博士、西暦を修復できたら、次は何の実験をするんですか?」

 

 

 

「そうだね、“君たち”は幸運なことに戦争に遭っても生き延びているくらい

 

悪運が良いから、次は逃げられない物を用意しようと思ってね。」

 

 

 

「やっぱり、博士は確信犯だったんですね。

 

まぁ、僕もこの研究所に来た時から分かっていましたがね。

 

それにしても、こんな残忍なことをして何になるんですか?」

 

 

 

「それはね、この地球の安全性の確認と人間の遺伝子が原因で起こりうる

 

犯罪者の確率を調べるためだ。

 

まぁ、彼らは君たちと同じ遺伝子だから、

 

犯罪どころか、僕に協力してくれるだろうね。」

 

 

 

不二は10歳の頃から、この研究所に通っている。

 

母親に教えられた様に自分と同じ遺伝子の人間を観察するために。

 

母親が自分のためにと参加した実験ではあったが、不二には腑に落ちない

 

事が多数あった。

 

 

 

「博士、子供達は将来、どうなるんですか?」

 

 

 

「君達と同じ記憶はもう、途切れてしまっている所も多くなってきた。

 

近々、死んでもらう事になるかも知れないね。

 

もちろん、家族には莫大な財産と君たちの成功の約束が果たされる。」

 

 

 

「それで、今操作している、兵役で全員を殺すんですね。」

 

 

 

「新なる、遺伝子が僕の研究を完成させてくれるだろう。」

 

 

 

 

手塚は地球の青い色を見つめていた。

 

まるで、自分が神様にでもなったかの様な錯覚を起す。

 

テレビで見た丸い地球が目の前にあって、

 

その中には数十人の人間が暮らしているのだ。

 

不思議な感覚になるのは当たり前だった。

 

その時、「ごっ」という鈍い音が操縦室の中で響き渡った。

 

不二の手には操縦室の中に置いてあった灰皿が握られていた。

 

 

 

「・・・手塚、あの中へ行こうか?

 

僕達が助かるにはそれしかない。」

 

 

 

「助かる?

 

何のことだ、不二。」

 

 

 

「分かるだろう?

 

アレは僕達なんだ、救いださないといけない。」

 

 

 

真っ赤な手をした不二は一旦、手塚によって休憩室に運ばれた。

 

薄暗い操縦室とは違い、真っ白で綺麗なベッドも用意されていた。

 

手塚が不二を運び終わると、跡部と千石も駆けつけた。

 

 

 

「あの地球の中で僕が助けを求めているんだ。

 

君もだよ、手塚。

 

死にたくないって、何回も叫んでる。」

 

 

 

「不二くん、君は彼らを助けたいのかい?」

 

 

 

「あぁ、僕達の命は彼らの命なんだ・・・。

 

やっと気付いたよ、周助・・・。

 

ずっと助けを待っていたんだね・・・。」

 

 

 

立ち上がろうとした不二を跡部が止めた。

 

 

 

「不二、お前は混乱状態だ。

 

あんな事をした後だし、お前が冷静な判断をできるとは思えない。」

 

 

 

「じゃあ、頼むよ。

 

僕はなるべく、彼らを逃がすために、全力を尽くすから。」

 

 

 

その時、不二は跡部たちにコードネームと称して悪魔の名前を付けた。

 

向こうの自分達を混乱させない為でもあったが、

 

一つの願掛けだった。

 

自分達を悪魔と称して、神、即ち生み出した博士を殺してしまった者として

 

あの世界とお別れを言うためでもあった。

 

3人を送りだすと不二は思い体を引きずって、操縦室に向かった。

 

 

 

「僕なら、裕太の言う事は信じてくれるよね?

 

君は研究結果からして、洗脳状態は殆ど解けているはずなんだ。

 

博士は気付いていなかったみたいだけど。」

 

 

 

博士は床に倒れ込んでいた。

 

目立った出血はなかったが、気絶しているだけとは思えなかった。

 

万が一に死んでしまったとしても、

 

今の不二にとっては自分の仲間の方が大事だった。

 

 

 

「裕太、裕太の記憶を僕に送るよ。

 

君の声で僕の気持ちを伝えて欲しい・・・。」

 

 

 

不二が祈ると跡部達は見たこともない、島に辿りついていた。