反逆の遺伝子

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

BATTLE.35 実戦場の子供

CHILD ACT.

 

 

 

日本が戦場になってから約8年の歳月が過ぎた。

 

手塚国光の下には母親の遺品が届けられていた。

 

13歳になっていた手塚にとってそれは思い出したくない記憶だった。

 

自分を助けるために死んでしまった母親を何故、自分が助けられなかったのか

 

と悔やむことが多かったからだ。

 

 

「国光、やはり母さんの背中には火傷の跡があったそうだ。

 

お前と同じ様な形をしたもの。

 

しかし顔が判別不明になるくらいに爛れていて

 

死体の判別が遅れたそうだ。

 

しかし、8年後にやっと遺骨が帰って来るんだ。

 

母さんも成仏できるだろう・・・。」

 

 

悲しい声で手塚に語りかける手塚の父親の背中はやけに小さく見えた。

 

まるで自分が何十倍も大きくなったかのように手塚は感じた。

 

しかし、父親の言った言葉に手塚は疑問を持った。

 

母親は手塚を庇い瓦礫の下敷きになったのだ。

 

そして手塚の背中には火傷の跡などなかったのだ。

 

 

「父さん、俺・・・学校に遅刻してしまいますので。」

 

 

そう告げると朝8時という部活には到底間に合いそうにない時間に家を出た。

 

手塚は事前にこのことを顧問の竜崎すみれに

 

話していたので叱られずにすんだ。

手塚は授業を受けている間にも自分が母親と

 

死別した時のことを思い出していた。

 

そのことを父親に話せば父親はきっとがっかりするだろうと

 

自分なりに考えていた。

 

 

『もしも、火傷の跡が無いと気が付いたら?

 

否、父は俺の背中を見ているはずだ。

 

だったら何故、俺の火傷などないと気が付かない?』

 

 

素朴な疑問、そして母親の死を知っているのは自分だけだと

 

手塚は胸の奥底にしまいこんだ。

 

幼少時に聞いた不二の

 

 

 

「ぼくたちはじっけんだいにされて、

 

いつかころされてしまう。

 

だってぼくたちはきめられたうんめいをいきる

 

ただのモルモットなんだから。」

 

 

と言うそんな言葉と共に。

「やぁ手塚。」

 

「不二・・・。」

 

「どうしたの、今日の朝練来てなかったよね?

 

俺、竜崎先生にも聞いたんだけど家庭の事情としか

 

教えてくれなかったからさ。」

 

 

手塚は不二の何もかも見透かしたような視線に

 

途惑ったが、今朝あったことを放した。

 

 

「実は今日の朝に連絡があったんだ、政府から。

 

それで母さんの行方不明だった遺体が発見されたって

 

連絡があってね・・・。」

 

 

「そう、なんだ・・・。

 

ごめんね、言いたくないこと言わせちゃって。」

 

 

いつもどこか冷たい目をしている不二が

 

この瞬間だけは本当に悲しそうな顔をしていた。

 

 

「手塚はきっと真実を見たくなるよ、きっとね。」

 

 

不二はいつものように笑った。

 

手塚はこの時には気付いていなかった、

 

もうすぐ、兵役という殺し合いが始まることを。