![]()
反逆の遺伝子
~The Prince of Tennis in Battle Royale~
BATTLE.17 聖なる街
Silent night
|
「観月さん、不思議ですね。
ここから観る星は俺たちの見たことのない物なんて。
今までの世界が偽物なんて・・・。」
不二裕太の声が夜空の中で響いた。
誰もいない裕太の家の近くの丘で2人は只空を見つめていた。
「もしかしたら、全て夢だったのかも知れません。
ここは僕達の世界で僕達は1人しかいない。
僕はそんなことを時々考えています。」
観月は空を見上げながら微笑んだ。
「でもそれは現実ではないんですよね。
家に帰れば僕そっくりな男がいて、僕の部屋には僕の部屋と
同じ物がたくさん置いてあるんです。
まるで僕がクローンであるかのごとく。」
「観月さん・・・。
でも木更津先輩の家は大変そうですよね。
同じ顔が4つになってるんですから。」
裕太はそっと笑いながら観月に話しかけた。
こっちの世界に来てから三日がたっていた。
放れて行動していた仲間たちにも再会した。
「木更津くん、彼らは平気なのでしょうか?
自分と同じ顔がいるということが。」
「双子ですからね、でも兄弟とは違うもう一人を
どう思うのか・・・・。」
「観月に裕太、家に帰らなくてもいいのかい?」
「木更津先輩・・・。」
裕太は声を上げた。
「俺のこと話ししていたでしょ?
俺が此処に来たのも、多分君達と同じ理由だよ。」
木更津敦は観月と裕太の隣に座った。
土手の草は夏の暑い気温を少し冷ましてくれている様だった。
「久しぶりに真剣に何かを考えてるんだ。
僕がもう1人、いつもならその相手は亮なのに
今は違う、本当に俺がもう1人いる。
そして亮ももう1人・・・。」
「木更津くんは彼らをどう思いますか?
僕達はまるで鏡の国から来た様ですね。
まるで僕達が偽物の様だ。」
木更津は裕太の隣から観月を覗いた。
「鏡の国に連れて行かれたアリスではなく、
鏡の国から連れ出された少年少女・・・・。」
裕太は俯いた。
星が輝く空の下で何もかもが消えてしまいそうだった。
「裕太!」
「兄貴!」
不二周助が観月たちの背後から裕太を呼んだ。
「帰ろうか?」
「不二くん、貴方は何を知っていたのですか?」
不二は少し顔を歪めた。
そして呟く。
「それは・・・向こうの不二周助に聞いてくれるかな?
僕はこっちの不二周助だから・・・。
それに大事な向こうの弟の帰りが遅いと向こうの僕に怒られちゃうからね。」
「不二くんは何をしているのです?
大切な弟なら自分自ら探しにくるはずです。」
「彼は彼なりに心配している・・・。
只、今は・・・。
僕にも今の彼の代わりは出来ないから、僕は今、彼の代わりをしている。
彼は重大な使命を背負っているの。」
不二は裕太を手招きした。
そして裕太に自分の前を歩かせた。
「君達も早く帰った方がいいよ。
きっとこっちの君達も心配しているから。」
裕太は2人と別れてから、不二の顔を見つめた。
「兄・・貴・・・。」
「裕太、どうしたの?」
「兄貴じゃないから、少し途惑ってるだけだ。」
「僕は兄貴だよ、誰がどう見ても・・・。
君の兄貴だ。」
「貴方はこっちの不二裕太の兄貴であって
俺の兄貴ではないじゃないか・・・。」
「僕の弟だよ、裕太は。
向こうの世界の人間でも、こっちの世界の人間でも。
2人とも僕の弟だから・・・。」
不二の声が響いた。
「おかえり、裕太。」
不二の声が不二の家から響いた。
|