08.闇

 

 

 

 

「向日・・・・」

 

 

「自爆したんだな、2人で。

 

馬鹿な奴らだとは思っていたが、ここまでだったとはな」

 

 

跡部景吾は笑いながら、泣いていた。

 

奥の部屋でも、脱出に使えそうな道具も脱出口もなかった。

 

火の着いた防火扉の残骸に、芥川慈郎も顔を歪めた。

 

 

「忍足も向日も馬鹿だ。

 

皆、欠けたら意味がないんだ。

 

全国行けなくなっちゃうだろ・・・・・」

 

 

座り込む芥川の腕を宍戸亮が引っ張り上げた。

 

 

「アイツらの命の分も、俺たちが生きなきゃ意味ないだろう。

 

アイツらだって、俺たちにそれを望んだはずだぜ」

 

 

宍戸の手には、向日岳人と忍足侑士のペンダントとブレスレットが

 

握られていた。

 

 

「忍足先輩には分かっていたのかも知れません。

 

奥に何もないって事も、脱出が防火扉の向こうからじゃないと

 

出来ないって事も・・・・・」

 

 

鳳長太郎は、涙を床に落とした。

 

 

「こんな所で、油を売ってるわけにはいかないだろ。

 

火が、向こうの部屋に移ってるんだから」

 

 

「・・・・行くぜ、このプログラムを終わらせにな」

 

 

4人になったプログラムは、続行していた。

 

そして、3人の元政府関係者は、外のB地点で地雷の犠牲になっていた。

 

 

「・・・・地雷はランダム・・・・いえ、故障している故に、

 

いつ暴発してもおかしくないって事ですね」

 

 

「そうだな、俺たちは逃げる為に戦う事になるな。

 

もう俺たちを追ってくる奴らはいなくなった」

 

 

「忍足達のお陰だな、アイツらが守ってくれてるんだ」

 

 

宍戸亮の声に、芥川慈郎は首を振った。

 

 

「違う、向日も忍足も日吉も樺地も、本当は生きていたかった。

 

オレたちを殺そうとした奴らもだ・・・・」

 

 

ぼそぼそと声を出す、芥川を宍戸は支えていた。

 

精神的に辛かったのだろう、目は虚ろになっていた。

 

いつも眠っていた顔とは別の生気のない目だった。

 

 

「・・・・お前がそんなんでどうする?

 

向日と忍足は、生きて欲しいって思ったんだ」

 

 

芥川に宍戸は、向日のペンダントを掛けた。

 

 

「それじゃなきゃ、こんな物、俺たちに残さないだろ?」

 

 

芥川は向日のペンダントを強く握り締めた。

 

羽のモチーフが手の中を擽った。

 

 

「・・・・そうだけど・・・・・そうだけど・・・・・」

 

 

夕日が芥川の影を近くの木まで伸びていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「怖いわね。

 

案外、このコ達、しぶといから。

 

でもいざとなったら、島中の地雷を爆破してやればいいだけ」

 

 

女の独り言は、コントロール室から漏れていた。

 

 

「・・・・何故、貴方は子供の死を望むのですか?」

 

 

「・・・・そんなの、きまぐれに決まってるじゃない。

 

政府の計画に、間違いはなにのよ。

 

子供の非行を防ぐため、正しい国のためよ」

 

 

「あのコ達は・・・・」

 

 

「世の中に犠牲は付き物よ、私の妹のようにね」

 

 

モニターには、爆発した施設が映し出されていた。

 

 

「また2人、死んだわ。

 

でも時間がないの、3人には死んでもらう。

 

もう、邪魔はいらないわ」

 

 

◆◆◆

 

 

 

「逃げ出したら、向日と忍足の親にペンダントとブレスレットを

 

渡してやれ。

 

そして、日吉と樺地の親に、最後まで勇敢だったって教えてやるんだ」

 

 

「分かった、宍戸」

 

 

芥川は向日の銃、M92Fを持ち上げた。

 

もう戦う相手はいなかったが、向日の銃だと思うと

 

安心感があった。

 

 

「もう逃げない」

 

 

「あぁ、逃げ出さない」

 

 

島の中心部から、一気に南の海岸まで走りきった。

 

船は思ったよりも損傷はしていなかったが、燃料を入れる事は

 

不可能だった。

 

 

「・・・・一か八か、皆で一斉に首輪を外して、海の中に逃げ込む。

 

そして、塩の流れにまかせて、船に身をまかせましょう。

 

それしか、俺たちに生きる希望はないんですから」

 

 

「・・・・食料は10日分はある。

 

デパートで缶詰を詰め込んで置いたのはラッキーだったな」

「最後のカケだ。

 

誰もこれに乗らない奴はいないな?」

 

 

跡部は微笑み、銃を首に当てた。

 

しかし、施設のあった場所が爆発音と共に煙を上げたのだ。

 

辺りは暗くなっていたが、赤い炎だけは鮮明だった。

 

 

「・・・・やっぱり、皆、俺たちを生かしてくれようとしれるんだな」

 

 

「掛けましょう、最後の掛けです。

 

アレでもう、俺たちの情報は届いていないはずです」

 

 

宍戸が銃を放つと、鳳の首輪は綺麗に外れた。

 

銃で軽度の火傷は負ったが、殆ど無傷だった。

 

 

「・・・・長太郎、生きろ」

「宍戸さん・・・・・」

 

 

 

「生きて、生き抜いて死ぬんだよ、俺たちは」

 

 

 

鳳が宍戸の首輪に銃を向けると、島の中心地点が爆発した。

 

爆発するはずのない場所と思っていた為、跡部は銃を

 

打つのをやめた。

 

 

「・・・・施設は爆発したはずです・・・・」

 

 

「まさか、島全体を爆発させる気か?」

 

 

「でも、そしたら実験の意味がなくなってしまうのでは?

 

プログラムとして使うはずの施設を・・・・こんな事」

 

 

「1から作り直すんだろうな。

 

こんな穴だらけのプログラムじゃ、上が納得しないだろうからな。

 

アイツらがほしかったのは、上に上がるきっかけに過ぎなかったんだ」

 

 

跡部は慈郎の首輪を外すと、自分の首に銃を着きつけ、外した。

 

 

「・・・・・宍戸さんも、早く」

 

 

「あぁ」

 

 

宍戸の首輪が外れると、一斉に海に飛び込んだ。

 

 

 

“実験的に、あるコの身体に爆弾を仕掛けて置いたの”

 

 

 

 

海に血の色が広がっていた。