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06.墓
「昼間とは言え、薄暗いですね・・・・」
北に位置しているデパートへと重い足を引きずってきた
6人は食品売り場だったと思われる地下1階に身を隠していた。
さっきまで、三階の日用雑貨が置かれている3階に、小さな音では
あったが、人が歩く音が聞えたからだ。
「・・・・それよりも、岳人は大丈夫なのか?」
「あぁ、少し血の気は引いたけど、血はもうほとんど止まってる。
でも、暖かい場所で傷の治療は必要や」
忍足侑士が自分の使っていたタオルを、向日岳人の左わき腹に当てた。
デイバッグに入っていた全員分のタオルはもう、使い切っていたからだ。
血の気の引いた向日は、忍足の長袖のジャージを肩に掛けていても、
振るえは止まらなかった。
「向日先輩、もう少しですから・・・・」
そう声を掛けた鳳長太郎だったが、生物や精肉が置いてある場所から
臭ってくる異臭に気分が悪くなっていた。
「長太郎、お前も少し休め、この臭いじゃ具合が悪くなるのは仕方がない。
水でも飲んで気を紛らわせよ」
宍戸亮は手にペットボトルの水を持っていた。
売り場から取ってきたのだろう。
それを鳳に向かって放り投げると、忍足に2本ペットボトルを差し出した。
「あぁ、すまへんな、宍戸」
目を開けない向日も小さな声で宍戸に御礼を言った。
忍足が忍足の膝に頭を乗せて横たわっている向日に、
ペットボトルの蓋を開けて、水を飲ませると向日は
目を少し開けた。
「・・・・おいしい・・・・」
その言葉と共に、向日の目には、マグカップを手にした芥川慈郎が
写りだされていた。
「コンソメスープ、持ってきたよ。
これで少しは、身体も温まるでしょ?」
芥川は向日の隣に座り、ストローを指して忍足に手渡した。
「身体が温まると、また出血しちゃうかもって跡部が言ってたけど、
大丈夫かな?」
「多分、大丈夫や。
ジローが持ってきてくれたんだからな」
暖かい飲み物に口を付けると、向日の身体も段々と温かくなった。
「そろそろ、12時だ。
発信機が付いているとはいえ、アイツらもここを離れただろう」
跡部景吾は救急箱を持って、立っていた。
「跡部、3階まで取りに行っていたのか?」
「あぁ、これ以上、岳人の身体を放っておく訳にもいかないからな。
それに、上にいたのは3人、明らかなに政府の人間ではなかった。
もしも政府の人間が、1人も残ってないとすると、今の監視室は空だ。
残っていたとしても、上の人間は昨日のうちに、ヘリでここを脱出している。
爆発音で聞き取り憎かったが、ヘリとセスナが飛び立ったのは、確認している」
跡部が淡々と話しながら、向日に掛けられていた忍足のジャージを取ると、
シャツを捲り、傷口を懐中電灯で照らした。
傷口は弾が貫通していた事が幸いして、弾を取り出す必要はなかったが、
傷口は、かなり化膿していた。
「・・・・消毒薬で治療できるとは思えないが、放っておくよりはマシだろう」
血の塊を、消毒液で濡らしたガーゼで拭き取ると、
少し開いた傷口が見え始めた。
「うっ・・・・」
少し呻き声を上げると、跡部は手を止めた。
傷口から血が少し出てきたが、その影響で跡部のジャージの袖は赤く染まった。
「岳人、大丈夫か?」
「大丈夫、少し痛いけど・・・・」
「ガーゼで止血して、もう1回消毒しましょう。
清潔な方が化膿の進行も防げますし・・・・」
鳳がそう言うと、跡部の隣でガーゼに消毒薬を降り掛け始めた。
簡単に塞がる様な傷には見えなかったが、ここから移動する為には、
無理にでも血を止める必要があった。
◆◆◆
「ねぇ、あの島はどうなってる?」
「・・・・今のところ、3人が犠牲になったみたいですが、
逃走犯4人の1人も、犠牲になってます」
飛行機に乗り込ませた幹部とは別に、
政府のヘリの中では、感知器を見ている男と女がいた。
極秘に計画された実験ではあったが、政府上層部に漏れる事を
恐れた為、全てのコントロールは島の敷地ないに設置されている
施設で管理される事になっている。
「地雷も仕掛けた島ですし、生き残る可能性はゼロです」
「・・・・そう、うれしいわ。
私もね、今度からあの島でプログラムをする事を認めさせる為に
彼らを犠牲にしたんだけれど、それは成功みたいね」
ヘリから見える島では、中心部分から、黒い煙が見え隠れしていた。
「・・・・もう用はないわね、東京に帰りましょう。
帰れば、正確なデータがコンピューターに記録されてるはずだわ」
ヘリがその場を去ったのは、1日目の午後5時だった。
◆◆◆
「傷口、しっかりと止まったぜ!」
「あまり動くなよ、いくらなんでも応急処置なんだからな」
跡部にきつく言われると、向日は飛び跳ねるのを止めた。
そして、デパートの屋上から下を覗いた。
「・・・・海からの脱出は無理、じゃあ・・・・どうする?」
「政府の施設なら、セスナが残っているかも知れないって
思ってるのは、俺だけですか?」
鳳は政府の施設がある、西の方角を指差した。
「あそこ、俺と宍戸さんが、監督と出会った場所の近くなんです。
あのコンクリートの建物が施設だと思います」
「じゃあ行ってみるか、禁止区域に設定されてるかも知れないが、
行ってみる価値はある」
デパートの非常階段を駆け下りると、下には1人の男が立ち塞がっていた。
「・・・・ここが俺達の墓場だ。
ちゃんと受け取ってくれよ、俺の最後の闘志を、な」
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