05.

 

 

 

「今日は晴れだな。

 

樺地と日吉が止めてくれたのかも知れないな・・・・」

 

 

 

跡部景吾は力のない声で呟いた。

 

日吉若と樺地崇弘が首輪の爆破によって死してから、

 

約8時間が経過していた。

 

雨は完全に止み、朝方ながら太陽の光が洞窟の中にも届いている。

 

 

 

「跡部、樺地の爆破は首輪だけじゃなかったわ。

 

地面ごと爆発した、だからあの男も避けようがなかったんや。

 

俺達が助かったのも樺地が俺達を庇ったおかげや、感謝せな」

 

 

 

忍足侑士は禁止区域から拾ってきた僅かに残っただけの

 

首輪の破片を持っていた。

 

銀色だった首輪は赤黒い染みで汚れていた。

 

 

 

「あぁ、俺達が離れれば、その場に埋まっている地雷が

 

爆発する仕組みになってるんじゃねぇの?

 

俺、侑士と少し放れてみたけど、少しずつ警告音がなる

 

ようになってるみたいだし・・・・。

 

でも樺地みたいに相方が死んだら、逃げ場はないみたいだけど・・・・」

 

 

 

向日岳人は自分の首輪を指差して跡部にそう伝えた。

 

海岸は昨日から禁止区域に指定されていたが、現在もそうなのかは

 

誰にも分からなかった。

 

 

 

「・・・・船、残ってるといいね、跡部」

 

 

 

芥川慈郎は眠たそうな瞼を擦りながら、跡部の脇に座っていた。

 

現在の正確な時間は分からなかった。

 

全員が腕時計を嵌めていたが、爆発の時の影響で跡部以外の

 

時計は壊れ、跡部の時計は少し狂ってしまっていた。

 

 

 

「俺の時計で6時になったら、海岸まで走るぞ。

 

禁止区域になっていたとしても、アイツらに捕まる訳にはいかないからな」

 

 

 

「禁止区域になっていたら、どうするつもりなの?」

 

 

 

「なるべく、海岸に近い場所に隠れる。

 

それしか・・・・」

 

 

 

宍戸亮は自分のガラスの割れた時計を外して、洞窟の外に放り投げた。

 

小さな石に当たった時計は、カランと乾いた音を響かせて、

 

少し遠くの木の下に落ちた。

 

 

 

「・・・・地雷が埋まっているなら、そこを避ける方法があるはずだ。

 

首輪自体の爆発は止められなくとも、地面に埋まっている奴なら避けられる」

 

 

 

「でも、俺は反対ですよ。

 

もしも、首輪ではなく人に反応するとしたら、そこを通るだけで

 

爆発する恐れがあります・・・・。

 

それに、見つける方法なんて・・・・」

 

 

 

跡部は鳳長太郎の意見に賛成した。

 

宍戸の考えた爆弾の事に一理あったが、それを探す暇はなかった。

 

警告音のない地雷を踏めば一たまりもないが、パートナーと

 

放れた時、死別した時の首輪の爆発の方が跡部には心配でならなかった。

 

 

 

「・・・・地雷は多分、禁止区域に指定される境界線の上に設置

 

されているんですよ。

 

樺地が最後に立っていた所は、丁度禁止区域から逃れて、

 

警告音がなくなった所でいたから。

 

でも、俺が踏んでいた所は、爆発しなかったから、

 

多分、境界線上に数個、並べられているんじゃないでしょうか?」

 

 

 

「・・・・て、事は、地図に書かれている各禁止区域の境界線に数個って事か・・・・。

 

その区域で相方が死亡、もしくは50メートル以上離れたら、警告音の

 

のち死亡、地雷のある区域で死ねば、死体も残らず爆破ってわけか」

 

 

 

「政府は俺達の遺体が残るのを恐れているんかな?

 

そうやないとしたら、何故、こんなトラップし掛けとくのか」

 

 

 

忍足が宍戸の投げた時計の側に自分の時計を投げた。

 

使い物にならない時計は身につけていても無駄なだけだったが、

 

父親に誕生日にもらった時計は、自分を感傷的にさせる所為か、

 

忍足は自ら外した。

 

 

 

「帰ったら、真っ先に親父に時計を買ってもらうわ・・・・」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

「ドジったんだってな・・・・」

 

 

「いや、俺達は最初からあんな運命なんだよ。

 

アイツらに目を付けられたんだからな・・・・。

 

見てみろよ、この装置・・・・。

 

そこ等中地雷だらけで、いっぽ間違ったら俺達も道ずれだ。

 

まぁ俺達が生き残っても政府は困るだろうな。

 

特にあの女はな・・・・」

 

 

 

「・・・・本当に、アイツらも可哀想になってくるよ」

 

 

 

3人の男は小高い場所から、海を眺めていた。

 

時刻は早朝5時42分、木と風の音以外は聞えない普通の一日だ。

 

 

 

「『なぁ、もしもアイツらの誰かが逃げられたなら、

 

俺はここで死んでもいいぜ?』

 

って、あの女に言ったんだ。

 

そしたら、あの女は

 

『楽しみにしてるわ、でも彼らが生きていても

 

貴方たちは死んでるかも知れないから、私が手を出す事はないだろうけど』

 

って言っていた。

 

アイツの頭の中には、この島に残った全員が生き残る可能性はない計画が

 

出来上がっていたんだろうな」

 

 

 

「俺達に逃げ場はないって事か」

 

 

 

男の放ったライフルの弾は草を書き分けてから、一番でかい木の幹に刺さった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

「銃声やな、この音を聞くのは5回目やったけか?」

 

 

 

「侑士、首輪の音がしないからって油断してると・・・・」

 

 

 

「向日も忍足も、コンパスなんかで地雷がある所が分かるの?

 

金属探知機じゃないんだし・・・・」

 

 

 

跡部を先頭に全員がパートナーと横並びに歩いている。

 

芥川は後ろを振り向き、向日岳人と忍足のコンパスに目を向けていた。

 

海岸沿いに近付こうとすると警告音が微かに聞えた為、

 

音がしない方にゆっくりと海岸沿いを目指した。

 

跡部と芥川がいた海岸は、Dと地図に書かれているが、

 

恐らく、新しく設定された禁止区域は海岸沿いの前にある

 

Eの区域なのだろう。

 

樺地と日吉が死んだ場所の区域の前に走って通り過ぎた、

 

小さな区域だった。

 

しかし、その区域を通らずに海岸沿いに向かうには

 

Fの中央にある深い森を通らなければならなかった。

 

 

 

「は?馬鹿かジローは。

 

コンパスは方角を楽しむ為の物なんだよ。

 

こんな深い森で、コンパスも持たずに歩けると思うな!」

 

 

 

南東の方角から、南にある海岸を目指しているが、

 

今までに見た事もないくらいの険しい道だった。

 

 

 

「え〜、じゃあ地雷はどうなるんだよ?」

 

 

 

「こんな誰も通った事のなさそうな場所に地雷が仕掛けられるとは思わない。

 

ただ、急がないと禁止区域がまた移動する可能性はある」

 

 

 

「・・・・跡部、じゃあここは安全って事?」

 

 

 

「あぁ、しかし、地雷は俺達が死亡しないかぎり発動しないと

 

俺は考えている。

 

樺地の死後に一気に爆発したからな・・・・」

 

 

 

深い森の出口が見え始めると、向日は嬉しそうに笑った。

 

やっと船に辿り着けたんだと叫ぼうとした瞬間、

 

すっぽっという空気が発射される音が響いた。

 

 

 

「・・・・岳人?」

 

 

 

「・・・・・・嘘だろ、何でこんな所から銃が撃てるんだよ・・・・」

 

 

 

左のわき腹を抱えた向日は膝から崩れた。

 

当たりを見回しても、深い森だけで、後は人の気配すら感じなかった。

 

 

 

 

「岳人、平気なん?」

 

 

 

「命は大丈夫そうだけど・・・・すごく痛いぜ」

 

 

 

「向日先輩、とりあえず船まで走りましょう。

 

気配はないんです、遠くから射撃されたと考えた方がいいですよ」

 

 

 

 

鳳は向日を抱きかかえると宍戸と一緒に先頭を駆け出し始めた。

 

忍足はそれに離れない様に、後ろから銃を手にして走り始めた。

 

跡部は芥川の銃と自分の銃を両手に持ち、

 

芥川から離れない様に後ろ向きに走った。

 

 

 

「・・・・こんな森の中を遠くから狙える奴なんているのか?

 

長太郎、やっぱり至近距離から・・・・」

 

 

 

「至近距離からの可能性もありますが、こちらにも銃はあります。

 

でもこれ以上の犠牲をださない為には、一刻も早く、

 

向日先輩の傷の手当てをする事です」

 

 

 

森の出口に着くと、晴れた海岸が鳳の瞳に飛び込んできた。

 

昨日の雨が嘘のような綺麗な海だった。

 

 

 

「向日先輩、血はあまり出てませんね」

 

 

 

「・・・・・嘘やろ、船が・・・・」

 

 

 

忍足が指を刺した先には、真っ赤に炎上している、船の姿があった。

 

 

 

「・・・・どうして?」

 

 

 

芥川も呆然として船を見詰めた。

 

船の燃料部分に銃弾の後が見つかった。

 

 

 

「・・・・絶対に逃がさないつもりなんだろうな、政府の連中は」

 

 

 

「大丈夫だ、まだ作はある。

 

それにあの船では、海の真ん中でのたれ死ぬ所だった」

 

 

 

跡部がそう言うと芥川は目を見開いた。

 

 

 

「ねぇ跡部、ここから抜け出すにはあの船が必要だったんじゃないの?」

 

 

 

泣き出しそうな声に跡部は冷静に答えた。

 

 

 

「この船は政府の物ではないと分かるだろう。

 

誰かが遭難したか、もしくは乗り付けた物だった・・・・。

 

たぶん、あの連中が乗ってきた物だ。

 

帰りの燃料は無かったはずだ・・・・。

 

でなきゃ、こんな所に乗り捨てる訳がない」

 

 

 

「アイツ等を殺せば、禁止区域だけで、他の邪魔は入らない・・・・。

 

それに安全に逃げ出せる物が他に見つかるかも知れへん。

 

俺と岳人が一緒に最初に逃げ込んだデパートに手当てする道具も揃ってるはず。

 

一回作戦を練り直そうや、全員でここから抜け出す為にな」