04.血

 

 

 

 

「榊監督が死んだ」

 

 

「あの銃声は・・・・」

 

 

「宍戸さんと俺が撃ったのが3発と榊監督が撃たれた時の1発。

 

榊監督の肩と足の傷は俺たちが付けた物です」

 

 

 

榊太郎の死体が運ばれた先に全員が集まっていた。

 

榊の身体には白い布が掛けられている。

 

また撃たれた頭から顔に掛けては黒い布が掛けられていた。

 

薄暗い部屋では全員に覇気はなかった。

 

 

 

「殺し合うのか、俺たちは・・・・」

 

 

 

日吉若は一言呟くと、部屋の隅で座った。

 

樺地崇弘も日吉から離れない様にと向かった。

 

跡部景吾は榊の身体を見つめていた。

 

 

 

「・・・・監督は何故、あんな場所にいたのだろうか。

 

政府へと入ったなら、いつ銃弾が飛んでくるとも分からない

 

場所に行くとは思えない」

 

 

「監督は“私がこの殺し合いを見る事はない”って言っていた。

 

自分が殺されることを知っていたのかも知れない。

 

それにプログラムの最中に入り込むなんて・・・・」

 

 

 

宍戸亮は榊に会った時に、どこかで違和感を持っていた。

 

中々始まらないプログラムと榊に近付いても何の警告もしない政府に。

 

プログラムに参加者以外の人間が侵入したとなれば、緊急に

 

中止しなければならない事になっている。

 

それを止めずに参加者に進入者を

 

捕まえさせるという事はありえない事だ。

 

 

 

「それなら、監督は俺たちの為にあそこに来たのかも知れませんよ。

 

そうとしか、俺には思えません」

 

 

 

榊の最後の言葉を聞いていた宍戸と鳳長太郎は、

 

真っ赤に染まった顔を俯けた。

 

近くで撃たれた榊の返り血が固まって、2人の表情を固めている。

 

 

 

「監督は俺達を逃がそうとしていたのかも知れない。

 

人一倍、責任感の強い人だったからな。

 

監督の血を無駄にしないように、俺達は・・・・」

 

 

 

跡部が呟くと部屋の扉が開いた。

 

プログラムの再開が決まったらしい。

 

 

 

「絶対に生き残ろうぜ」

 

 

 

宍戸が声を上げると全員が力強く頷いた。

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

スタート地点を出た8人は銃を見につけた。

 

 

 

「政府から逃れる方法は、海岸沿いに捨てられていた船に乗って

 

から、暫くはじっとしているしかない。

 

それでも首の装置を外さなければ、命はない。

 

逃げるとしても上空から見つかる確率が高い・・・・」

 

 

 

「不可能に近いな、それでも逃げ出さなアカンな。

 

監督の命は無駄にはしない為にも」

 

 

 

跡部は芥川慈郎と一緒にいた海岸で見つけた船を、豪雨で流されていない事を

 

願ってそこを目指した。

 

全員で行動しているが、政府はそれを気にしていないらしく、何の警告もない。

 

 

 

「もしかしたら、このシステムはオートマチックなのかも知れませんね」

 

 

 

日吉若はそう呟くと鳳は「どういう事か」と聞き返した。

 

 

 

「つまり、政府は監視していないんですよ。

 

器械に任せている所為で、単純なミスをしたと考えられます。

 

監督が忍び込んだ事にも気が付かないくらいですから・・・・」

 

 

 

「日吉、それが本当なら、立ち入り禁止区域を避ければ

 

首輪は爆発しないって事になるな」

 

 

 

「はい、それに俺が聞いていたBR法は政府が数百人体制で

 

しかも参加者もこんなに少人数ではありません。

 

もしかしたら、下の人間が実験として俺達を・・・・」

 

 

 

「・・・・許せないな」

 

 

 

宍戸もそれに反応した。

 

暫く歩くと、海岸に辿り付いた。

 

海は少し荒れていたが、船は奇跡的にそこにあった。

 

辛うじて8人全員が乗れるくらいの小さな船に全員が希望を見出した。

 

 

 

「雨が止むまで、あの小屋で休もう。

 

晴れてからでも、逃げ出せるだろう」

 

 

 

小さな小屋に男が8人は少しきつかったが、それでも

 

屋根があるだけマシだと日吉は思った。

 

この島から抜け出すには、荒れた海を渡るのは危険だ。

 

首にはめられている発信機も、海上から彼らを探す手がかりになって

 

しまうだろう。

 

それを阻止する事を跡部は考えていた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「私達はそろそろ、この島を離れましょうか。

 

こんな場所にいては、命が何個あっても足りませんからね」

 

 

 

「だめですよ、彼らの監視は残らないと」

 

 

 

「そんなの要らないでしょ?

 

だって装置の実験は成功しましたし。

 

それに後は殺し合わなくとも、禁止区域の餌食になる

 

事は分かっているんですから」

 

 

 

コンクリートで出来た無機質な建物の中で、白衣を着た人が数人で

 

飛行機の手配を始めていた。

 

 

 

「これは事故ですから、上官も分かりはしないでしょうね」

 

 

 

「・・・・8人の少年の命はそんなに軽い物なんでしょうか。

 

実験には動物でも、死刑囚でもよかったはずです」

 

 

 

ガンという器械を叩く音が響いた。

 

下の地位の男に口答えされたのが気に入らなかったのだろう。

 

女でありながら、時期BR法の最高司令官になる立場の人間に

 

口答えは命とりだったのかも知れない。

 

 

 

「ねぇ、装置が壊れてしまったわ。

 

あの子達、多分今から死ぬわよ。

 

あんたの無能の所為でね」

 

 

 

サイレンが響き渡った後、無機質な声が島中に流れた。

 

【立ち入り禁止区域を発表します】

 

 

 

「・・・・これは・・・・」

 

 

 

「設定はしていないから、今のは多分・・・・あの子達のいる

 

場所が禁止区域になるはずよ。

 

まぁ、私達がこの島を離れても、彼らの命はもうないけどね」

 

 

 

飛行機が到着すると、足早にコントロール室を後にした。

 

設定がされていない状態の場合、禁止区域は2時間ごとに変わる。

 

それはランダムではなく、確実に人のいる区域に設定される。

 

放送で予告されてから、10分でそこから放れなければ首輪は

 

爆発し、その人の命を奪い取るのだ。

 

それは夜でも朝でも関係なかった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「サイレン・・・・禁止区域・・・・」

 

 

 

禁止区域は海岸沿い付近に設定された。

 

全員が固まっている所為だと、跡部考えていた。

 

せっかく雨が止むのを近くで待っていたというのに、

 

何てことだと跡部は思った。

 

 

 

「とりあえず、ここから放れんとアカンな。

 

また戻ってくればいいだけや、気を落とすなや」

 

 

 

向日学人と芥川慈郎の肩に手を置くと忍足は笑って見せた。

 

制限時間は10分、何処までが禁止区域なのか確かな情報はなかった。

 

その所為でより遠くまで逃げなければならなかった。

 

跡部は自分のデイバッグを背負うと、地図を頼りに全員を引き連れて

 

小屋を後にした。

 

雨は小雨になってきていたが、今はこの場所を離れなければならなかった。

 

 

 

「俺達は逃げ出せる」

 

 

 

日吉が呟くと跡部は黙って頷いた。

 

海岸のすぐ後ろにある森に入ると、なるべく早く走り始めた。

 

土は雨の所為でぐちゃぐちゃとしており、走り難かった。

 

8人全員で走っている所為か、ドロは足のあちらこちらに付着していった。

 

 

 

「あと少しで、森を抜けますね。

 

俺達が最初に別れた場所に出ます」

 

 

 

約5分も走っただろうか、やっと島の中央にまで戻ってきた。

 

ここまで来れば、首輪の爆発の心配はなかった。

 

 

 

「死にたくなかったら、俺達から逃げるんだな」

 

 

 

声が聞えた方を見つめると、ライフルを持った男が8人を狙っていた。

 

そして銃声が聞えると、跡部の隣にいた日吉の口から血が流れた。

 

 

 

「日吉・・・・」

 

 

 

倒れて行く日吉を鳳が抱きかかえた。

 

噴出す血は鳳の制服を真っ赤に染め上げていた。

 

 

 

「お前・・・・」

 

 

 

「このプログラムは只の実験ではない。

 

逃げ出せる訳、ないだろう」

 

 

 

雨が上がった。

 

それでも日吉の顔には雨が降り注いだ様な涙が流れていた。

 

そして、日吉が即死した直後、樺地の首輪が機会音を発し始めた。

 

 

 

「皆さん、離れてください・・・・」

 

 

 

当たりの木が殆どなくなるくらいの威力で爆発した。

 

2人の遺体の姿はなかった。

 

 

 

「・・・・樺地」

 

 

「ウソだろ、日吉と樺地が・・・・」

 

 

 

所々に血の跡は見つかるものの、姿はなかった。

 

俺達は苦られないのかも知れないと誰もがそう悟った。

 

 

 

「・・・・跡部さん、この死体・・・・」

 

 

 

「巻き込まれたんだろうな、さっきの奴の遺体だ」

 

 

 

「じゃあ、もう狙われずに済みますね・・・・」

 

 

 

「いや、それはないな。

 

“俺達から逃げるんだな”とアイツは言っていた。

 

他にも仲間がいるのかも知れない」