02.

 

 

 

一斉に学校から飛び出した8人は、目の前にある森を見つめた。

 

お互いのパートナーと、放れない様にと手を繋ぎ、バラバラに散らばった。

 

 

 

「俺たちが全員生き残る確率は0に近い。

 

それでも、またここで・・・・」

 

 

 

鳳長太郎はそう言うとパートナーの宍戸亮に手を引かれて東の方向へと進み始めた。

 

ルール説明で分かってはいたが、殺し合いを始めるのは10分後である。

 

それまでに作戦を考えたり、殺したい相手を付けたりと色々な事を教わった。

 

この無人の島では、8人意外の人間は存在していない。

 

実質3人を殺せば、2人は生き残れるのである。

 

パートナーの片方を殺せば、時間差で片方の首輪が爆発する事になっているからだ。

 

8人の気持ちは揺れていた。

 

 

 

★★★

 

 

 

森の奥に進んでいた日吉若と樺地崇弘は

 

何の言葉も交わさないまま、歩き続けていた。

 

森は人工的に作り上げたのか、綺麗に木が並んでいた。

 

氷帝の幼稚等時代に日吉と樺地は、この様な所に遠足に来た事があった。

 

当時、日吉は樺地の事を黙っている可笑しな奴としか思っていなかったが、

 

同じ班だった事を今でも覚えている。

 

それから数年後、同じ氷帝学園のテニス部でレギュラー争いをしているとは

 

日吉にも予想外だっただろう。

 

 

 

「樺地、そろそろ10分が過ぎる頃だ。

 

武器を準備しよう・・・・」

 

 

 

いつもなら自信ありげな口調の日吉が、少し控えめな口調で呟いた。

 

樺地もいつもの様に「ウス」と一言返した。

 

 

 

「支給された武器は全員分、銃だと聞いた。

 

先輩たちが攻撃してくるとは思えないが、とりあえず身に着けておこう」

 

 

 

デイバッグの底から、日吉はスミスアンドウエスンM59オートを、

 

樺地はイングラムMサブマシンガンを取り出した。

 

 

 

 

「普通なら当たり武器なんだろうけど、今回は当たりとは言えないかも知れない。

 

先輩たちも今頃は、こんな風に殺し合いの武器を手にしているんだろうな」

 

 

 

「そうかも知れません。

 

でも進まないといけないんです」

 

 

 

普段無口な樺地も武器を見て呟いた。

 

銃の中に弾は入っていない。

 

自分でセットするのだろう、別に30発分の弾が入っていた。

 

 

 

「コレを詰めている間は、何も考えないで済む」

 

 

 

日吉は弾を詰め始めると、樺地は隣で自分のサブマシンガンにも弾を詰め始めた。

 

樺地に支給されたサブマシンガンは32発の弾が入るが、弾は30発しか

 

用意されていなかった。

 

日吉が慣れない手つきで、銃を構えると空から大粒の雨が降り注ぎ始めた。

 

 

 

「雨か・・・。

 

天気予報でも雨だっていっていたからな」

 

 

 

2人は大きな木の下に隠れた。

 

この森の中で、雨宿りできる所はここしかなかった。

 

 

 

★★★

 

 

 

「雨や・・・・」

 

 

 

忍足侑士は自分の身体をデイバッグの中に入っていたタオルで拭き取った。

 

この廃ビルに辿り着くまでに、大分身体が濡れてしまっていた。

 

相方の向日岳人の身体も同様に完全に濡れていた。

 

 

 

「侑士、これじゃあ外に出られるまで、大分掛かるな。

 

こんな視界の悪い中じゃ、殺されるのも時間の問題だし・・・」

 

 

 

向日は自分のデイバッグからM92Fを取り出した。

 

殺し合いをするつもりはなかったが、自分が殺されるかも知れないと

 

いう恐怖の方が勝っていた。

 

本当なら今頃、コートでラケットを握っているはずだったが、

 

今は何故か、触った事もない銃を握っている。

 

その現実が雨の音で鮮明に確認できた。

 

忍足もデイバッグから、スミスアンドウエスンM19・357マグナムを

 

取り出した。

 

弾を詰める為に銃を弄っていると向日はぼそっと言葉を吐いた。

 

 

 

「それ、リボルバーだよな。

 

ロシアンルーレットやる時に使う奴・・・・」

 

 

 

「そうやな、弾を一つだけ詰めて順番に撃って行く。

 

確率は6分の1や・・・・」

 

 

 

「そうか、死ぬ確率は6分の1か・・・。

 

俺たちが生き残る確率よりは低いのかな」

 

 

 

向日は忍足の銃を手にした。

 

相方が死ねば自分も死んでしまう事を知っていた忍足は

 

自分の銃を取られても慌てもしなかった。

 

 

 

「もしも、これで死ななかったら、俺たちは生き残れるかも知れない。

 

生き残って、テニスしているかも知れない」

 

 

 

銃をこめかみに当てた向日は引き金に指を掛けた。

 

忍足はそれを見ても何も感じなかった。

 

リアルな感覚が失われて行く事だけが忍足を支配していた。

 

 

 

「確率は6分の1、俺たちが生き残る確率は・・・4分の1・・・」

 

 

 

向日が引き金を弾くとかしゃという乾いた音が響いた。

 

すると大きな笑い声を上げた。

 

 

 

「俺の勝ち・・・」

 

 

 

そう呟くと向日は自分のポケットからガムを取り出した。

 

相方の忍足にもそれを手渡すと同時に銃も手渡した。

 

 

 

「・・・雨が冷たいから、俺、まだ死ねない」

 

 

 

★★★

 

 

 

現在、11時30分。

 

雨はどんどん勢いを増していた。

 

島全体が流されてしまいそうな位の豪雨だ。

 

全員が雨宿りをしている中、跡部景吾と芥川慈郎は海岸沿いを歩いていた。

 

雨が降っているというのに太陽は跡部達に顔を覗かせていた。

 

 

 

「サイレンが聞えないのは、政府も雨の中で一日目を戦わせるのを

 

途惑っているからだ。

 

途中からの少量の雨なら、前にもあったが、こんな豪雨では・・・・」

 

 

 

「跡部、取りあえずはあの小屋で休もうよ。

 

サイレンが鳴らないんだから、歩いてても意味はないでしょ?」

 

 

 

「あぁ、そうだな。

 

でも俺は少しでも脱出の方法を考えたいんだ」

 

 

 

跡部と芥川はぼろぼろの小屋へと進んでいた。

 

海岸沿いにあった所為か、砂が大量に床に広がっていた。

 

木でできたダイニングデーブルと椅子が4脚、キッチンの着いた

 

単純な作りの小屋は以外にも過ごし易かった。

 

跡部は身に着けていたCZM75をテーブルに放り投げた。

 

15と1発、弾を入れられる銃だったが、跡部にとってそれはどうでも

 

いい事だった。

 

芥川のハイスタンダード22口径2連発デリンジャーも

 

跡部は自分の身に着けていた。

 

芥川は自分では銃を持ちたくないと言っていたからだ。

 

 

 

「ジロー、お前は自分の身を守る為にも銃は自分で持つべきだ。

 

1人で2人は相手出来ないのはお前も分かっているだろう」

 

 

 

「オレは忍足たちがオレを殺すとは思えないよ。

 

もしも殺されても、オレは皆を殺したくないし」

 

 

 

銃を持つ事を拒絶した芥川は眠る事もなく、ただ虚ろな目をしていた。

 

 

 

「雨が止んだら、サイレンが聞こえてくるかも知れない。

 

そう思うと、何も考えられない」

 

 

 

「・・・・全ては始まったばかりなんだ」

 

 

 

★★★

 

 

 

宍戸亮は銃を手にしていた。

 

ブローニングハイパワー9ミリはずっしりと手に馴染んでいた。

 

一度は捨てようと思った銃だったが、護身の為にと鳳長太郎に止められた。

 

コンクリートで出来た屋根の着いたベンチに腰を掛けると目で雨を追う。

 

鳳もそれと同じ様にしていた。

 

 

 

「ずっと雨が降っていればいいって初めて思いました。

 

子供の頃は早く止んでくれればいいと思っていたのに・・・」

 

 

 

呟いた言葉は遠くへと消えていった。

 

宍戸は鳳の言葉に何も言えなかった。

 

雨が少し静まってくると、鳳は自分のワルサーPPK9ミリを木に向けて放った。

 

突然の銃声に宍戸は声を失った。

 

 

 

「・・・・宍戸さん、構えてください。

 

誰かいます・・・・確実に」

 

 

 

「・・・・跡部、いや他の奴かも知れない。

 

もしも当たったら・・・・」

 

 

 

「いえ、俺たちはまったく反対に歩いていたんです。

 

こんなに近くにいるはずはない。

 

だったら、それ以外の何かが・・・・」

 

 

 

鳳の瞳はその何かを捕らえていた。