子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竜崎桜乃の想い

 

 

 

 

 

 

手塚先輩は私を助けてくれました。

 

少し怖そうな先輩だと思っていたけど優しい人でした。

 

今なら分かる気がします、彼が何故私を助けてくれたのか。

まだ入学してまもない頃、私はよく学校の内庭で壁打ちをしていました。

 

リョーマくんに教わったのに中々上手く出来なくって

 

それでも上手くなりたくって一生懸命練習していました。

 

内庭は人が来なくて滑降の練習場でした。

 

 

 

 

「竜崎、此処で壁打ちか?

 

練習熱心だな、感心した。」

 

 

 

 

人気の無い場所だったからいきなり声がした時は驚きました。

 

驚いた拍子に手に持っていたボールを落とすくらいに。

 

 

「手塚先輩・・・・?」

 

 

彼はとてもマジメな顔で私に言いました。

 

 

膝が伸びている。」

 

 

リョーマくんと同じ事を言われました。

 

直していたつもりでも癖に成っていたのかも知れません。

 

優しかった先輩はどこか私に似ていた気がします。

 

「竜崎、人の気持ちとはそういう物なんだ。

 

誰にも責める資格はない。

 

俺とお前は似ていたのかもしれない・・・。」

 

 

 

 

“そうか私は他の誰かに夢中で手塚先輩に気付いていなかった。”

 

 

 

私が手塚先輩を殺した。”

 

 

 

“知らない間に私は色んな人を傷付けていたんだ。”

 

 

 

 

 

今、ごめんなさいと謝ったら彼は許してくれるのでしょうか?

 

今思い出せるのは楽しかった日々、私が気付かなかった日々。

 

手塚先輩と私は似ている・・・。

 

私たちは必死に誰かに気付いて欲しがってもがいていた。

 

リョーマくんは最後まで私の知っている強い人でした。

 

いつも通りにクールなままで最後まで死んでいきました。

 

自分が死んでしまうと知っていても恐れなんて感じさせずに。

 

 

 

「最後に俺に花を手向けてよ・・・。」

 

 

 

最後まで彼は私の憧れていた彼のままで死んでいきました。

 

私の知っている強いリョーマくんのままでした。

 

私は人は簡単に死なないと思っていました。

 

リョーマくんが何処かで生きていてくれるんじゃないかと

 

あの倉庫に戻った時そう感じていました。

 

 

 

 

手には自分で摘んだ花を持って勇気を振絞ってあの扉を潜りました。

 

声を潜めて名前を呼びました。

 

夕方だというのに中は真っ暗で私は足が竦んでいました。

 

 

 

 

 

恐怖よりも悲しみが勝っていて何かに怯えるという感覚が麻痺していました。

 

ただリョーマくんの死が受け入れられるかそれだけが心配でした。

 

でも中には私の予想とは裏腹な展開が待ち受けていました。

 

倉庫の中にはリョーマくんの遺体と他に2人の影がありました。

 

私の心拍数が今までにないくらい早く強くなりました。

 

 

 

誰?

 

 

 

私を殺さないで・・・・。

 

殺さないで、私はリョーマくんと約束したの・・・。

 

精一杯に自分の武器を相手に投げつけました。

 

 

 

 

でもそれは外れて私の胸元にはナイフが刺さっていました。

 

そして私の投げた武器は火炎瓶で倉庫は火の海に化しました。

 

 

 

 

“リョーマくんもこんな風に死んだのかな?

 

自分が居なくなってからこんな風に。”

 

と思いました。

 

 

 

 

夕焼けの色で目の前が真っ赤に染まっていました。

 

 

 

でもその赤は夕日の赤では無く、炎の赤で私たちがこれから焼かれる炎だった。

 

私は彼の側で死ねる事がうれしかったのかも知れない。

 

 

 

1人で死んでしまった、私が殺してしまった先輩にゴメンナサイ・・・・。

 

私達は天国に逝けるのでしょうか?

 

私はそんな事を思う中で胸の傷の痛みと炎の煙に巻かれて気を失いました。

 

私はこの戦いで気付いた事があります。

 

少しの勇気があれば私も手塚先輩も幸せに成れたのかも知れません。

 

自分に勇気があれば大切なモノ、大切な誰かを守れるから。

 

 

 

ありがとう、私はもう大丈夫だから・・・だから・・・。

 

だから貴方はあなたを心配してあげて・・・。

 

誰でも守りたいモノは1つじゃないから。