子供達の聖戦

~The Prince of Tennis in Battle Royale~

 

 

Battle.6  君に伝えたいこと

 

 

 

 

 

「綺麗な声をしている。」

 

 

 

俺は彼女にそんな事を言った事がある。

 

彼女は俺をあまりよく知らない先輩としか思っていないのだろう

 

きょとんとした顔でただ俺の顔を見つめていた。

 

 

 

「先輩、私迷惑じゃありませんか?」

 

 

 

その声の先に手塚は顔を向けた。

 

 

 

「あぁ、竜崎。

 

心配するな、学校の先輩として当然の事だ。」

 

 

 

森の中では殺し合いの合図が放たれたとは思えない平和さで

 

2人を包んでいた。

 

 

 

「リョーマくん達、大丈夫でしょうか?

 

大石先輩や河村先輩も・・・皆・・・・。」

 

 

 

手塚は自分の手を桜乃に伸ばした。

 

 

 

「平気だと俺は信じている。」

 

 

 

桜乃も自然と手塚の手を掴んだ。

 

2人はこの状態でなければ手など繋ぐ事も無かったであろう。

 

 

 

「竜崎、覚えているか?

 

昔、お前が校舎裏で壁打ちをしている時に少し話したな。」

 

 

 

「はい、手塚先輩が指導してくれたおかげで先輩に褒められました。

 

私、あの時。3回しか壁打ち続かなかったんですよ。」

 

 

 

笑みが零れる桜乃に手塚は少しだけ微笑んで見せた。

 

 

 

「この平和が続けばいい、

 

そう思っているのは俺だけじゃないはずだ。

 

やっと至福の時を得た者もこの中には居る。」

 

 

 

 

俺が君に惹かれている事は越前も気が付いていたはずだ。

 

あの時もアイツは君と俺の会話を聞いていたからな

 

でも何も途惑わなかった、越前にどう思われても。

 

 

 

 

 

「部長、何処いったんすかね?」

 

 

 

「越前〜、歩き回りすぎだぜ。

 

俺、疲れちまったよ。」

 

 

 

 

「桃先輩、根性無さ過ぎ・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

「手塚先輩、そろそろ、禁止エリアが発表に成るんでしょうか?

 

皆が出てからって事に成ってますが・・・。」

 

 

 

「そうだな、そろそろ人に逢ってもおかしく無い、

 

デイバッグを開けて武器を・・・。」

 

 

 

桜乃は手塚を見上げて問う。

 

 

 

「手塚先輩は参加しますか?」

 

 

 

「自分からは参加しないだろうな、

 

それに参加しても俺は勝ち残れないだろう。」

 

 

 

 

『お前が居るから・・・。』

 

 

 

手塚は自分の声を押し殺して木の茂みにデイバッグを下ろした。

 

 

 

「武器は短刀・・・か・・・。」

 

 

 

桜乃も自分のバッグから武器を取り出した。

 

 

 

「・・・銃・・・。」

 

 

 

『スミスアンドウエスンM19357マグナム!

 

そうか竜崎は当たり武器だった様だ。』

 

 

 

 

「ウソ・・・本当に・・・これで・・・・。」

 

 

 

桜乃は震えた手で銃を持ち上げた。

 

 

 

「竜崎、冷静に成れ。」

 

 

 

ガタガタと銃を持つ手を揺らす桜乃に手塚は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手塚先輩!」

 

 

 

「・・・・!!?竜崎、気付いていたのか?」

 

 

 

学校の校舎裏で壁打ちをしている桜乃を手塚は見ていた。

 

 

 

「あ・・のぉ・・、私、殆ど続かないので・・・。」

 

 

「そうか・・・。」

 

 

手塚と桜乃の間に気まずい空気が流れる。

 

 

 

「手塚先輩はどうしてここにいらっしゃったんですか?」

 

 

 

「・・・少し休もうと思ったんだ、

 

教室では落ち着いて過ごせないからな。」

 

 

 

そんな続かない会話が桜乃には辛かった。

 

 

 

 

 

「あのぉ・・・良かったら指導してくれませんか?

 

無理にとは言いませんが・・・。」

 

 

 

君は気付いていなかったのか?

 

俺が君に惹かれていることに・・・。

 

風が君の髪を撫でて君は俺の事を見つめる

 

君は優しく俺に微笑み掛けるんだ・・・。

 

越前に向ける好意の微笑とは別の笑みを・・・。

 

 

 

 

「俺はこのゲームに参加出来た事、うれしく思っている。」

 

 

桜乃は恐怖で銃を地に落とす。

 

 

 

「・・・えっ?・・・・・・。」

 

 

 

俺はこのゲームを壊してみせる、

 

そして皆で帰って・・・そうだな、大会に出よう。

 

もしその大会で優勝したら・・・・。」

 

 

 

 

「え?!手塚先輩・・・・!!」

 

 

 

「考えて置いてくれ、竜崎。

 

俺がお前の側でお前を守る、そして皆で帰ろう・・・。」

 

 

 

 

一方、リョーマと桃城は断崖絶壁で立ち止まっていた。

 

 

 

I’ve the confidence to win this game......

(俺はこのゲームに勝つ自信が有る・・・)

 

 

「越前、どうした??」

 

 

I’m back to home.

(俺は家に帰る。)

I've the goal. I want to win by tennis to my Dad.

(目標がある、親父に勝ちたい。)

 

 

 

 

 

 

 

『お前が好きだ、竜崎・・・。』