子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Battle.42 死に魅せられし者

 

 

 

 

 

 

 

 

「美しいですね、本当に。」

 

 

「そうか、お前はそういう趣味があったんだな。柳生。」

 

 

 

彼はカレ以上に影を持っていた。

 

 

 

「柳先輩、やっと見つけた・・・。」

 

切原の顔が歪んだ。

 

 

「柳生・・・せんぱ・・い。」

 

 

前屈みの姿勢で切原は見上げていた。

 

 

 

 

 

 

「心配するな、赤也。

 

お前の身体の方が心配だ。」

 

 

切原は柳生の顔を睨みつけていた。

 

 

「人は死に魅せられる者なのですよ。

 

思春期という私達のような時期は特にね。

 

でも私もこんな馬鹿げた政府のゲームがなかったら

 

ソレには気付かなかったでしょうね。」

 

 

 

 

 

柳生の目は悲しそうな表情をしている様に見えた。

 

 

 

 

 

人は死を恐れ、死に憧れ、死に魅せられる。

 

死とは人の永遠のテーマであり、邪魔な物。

 

不老不死を研究している学者は自然の摂理に逆らおうとしているが

 

それは死を妨げる事がいいとされているからだ。

 

では何故、死を選ぶ事は責められるのでしょうか?

 

死は悪で生は善なのでしょうか?」

 

 

 

柳生は切原に盛った毒の瓶を手に取った。

 

 

 

「これが貴方の体を蝕んでいる毒です。

 

青酸カリですね、水に溶かして飲ませるのには成功しましたが

 

あまり効果は無かった様ですね、耳掻き1杯の量でも

 

致死量には十分ですのに。

 

それとも切原くんの精神力がそうさせているのかも知れませんね。」

 

 

 

 

柳は自分の所有している武器を手にした。

 

小さなステーキナイフ、これが柳の武器だ。

 

 

 

 

「青酸カリというお前の武器と俺のこのナイフ。

 

どっちが強いかは分かっているな。」

 

 

 

 

切原は致死量の何十倍もの青酸カリを服用した事を知った。

 

その事が原因で何処かで自分は死なないと思っていた緊張の糸が解れた。

 

 

「ゲッ・・・フ・・・・。」

 

 

数日間、少量の食べ物しか口にしていない切原には

 

口から吐き出す物は無く、ただ血が滴り落ちただけだった。

 

 

 

「赤也!」

 

 

 

「先輩、大丈夫っス・・・。

 

少し目眩がしただけなんで・・・・。」

 

 

 

「人はしぶとい生き物ですね。」

 

 

 

柳は柳生の腹をステーキナイフで刺したが

 

その刃は半分に折れ曲がり足元に落ちた。

 

 

 

「致命傷とはいかなくても、人はこれで恐怖を覚えるのですよ。」

 

 

柳は自分の手にしているステーキナイフを捨てた。

 

 

「柳生先輩・・・・。」

 

 

幸村は切原の声を聞いた。

 

 

この近くにアイツらが居るのか?」

 

 

「何で、何で先輩が・・・血なんて・・・吐くんですか?」

 

 

驚いた様子の切原に柳生は応えた。

 

 

「私の死は私の物だからですよ。」

 

柳生は自分自らも青酸カリを飲んでいたのだ。

 

 

「私は・・・人に殺させるのは・・・嫌・・・なんですよ。

 

仁王君が自ら命を絶った様に私もそうします。

 

だって私は詐欺師を騙していた男なんですから・・・。」

 

 

 

柳生は崩れ落ち自分の為に笑っていた。

 

 

 

 

「お前たち・・・。」

 

 

 

それは惨劇だったのか、それとも・・・。