子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

Battle.35  運命と定め

 

 

 

 

 

 

「精一はまだ生きているのね、よかった。

 

貴方の息子さんが死んでしまった事は残念に思うわ。

 

でもね、それが定めなの。

 

神様の決めた運命で誰も逆らえないのよ。」

 

 

 

政府の高官である幸村の姉はそう呟いた。

 

 

 

彼が殺したのね、宍戸くん。

 

彼の兄は貴方の旦那に殺されたそうね。

 

しかも島の不備で生き残っていた彼の兄を・・・。

 

でも私は何も後悔していないわ。

 

だって私の子供ではないのだもの・・・。」

 

 

 

「じゃあその涙は何かしら?」

 

 

 

政府の人間である以上、参加者に感情は見せてはいけない。

 

たとえ生き残ったとしてもそれが定め。

 

 

 

 

「これはただの水分よ。

 

人間の体の中に流れる水分・・・。

 

それが脳の指令によって出されてるだけ。

 

感情なんて人にはないのよ。

 

ましてや、私が彼のために泣くなんてありえない・・・。」

 

 

 

 

 

樺地の身体から鳳の託したメモを跡部が取り出した。

 

血にまみれてはいたが几帳面な字で鳳が家族に当てたものだ。

 

これを届ける使命は跡部に託された。

 

 

 

「何でお前たちが死ななければ成らなかったのか・・・。」

 

 

 

跡部は千石の後を追って森の中を歩き始めた。

 

上りの時とは違う疲労感を感じる。

 

仲間が居た分、疲れなかったのだろう。

 

 

「おい、お前!」

 

 

聞いた事のある声が跡部の耳に届いた。

 

 

「・・・亜久津・・・・。」

 

 

驚いた表情を見せると亜久津は笑った。

 

壇ですら跡部をあざ笑う様な笑みを見せた。

 

 

「亜久津先輩、彼は殺してもいいですか?」

 

「勝手にしろ。」

 

 

人を殺していないと分かる様に制服には血の染みはない。

 

でも2人が狂っていると言う事は跡部には分かっていた。

 

 

「俺は急いでるんだ、どいてもらえるか?」

 

「それは無理だな、太一がやっと殺す決心をしたんだからな。」

 

「お前は殺さないのか、亜久津。

 

お前もまだ人は殺していないだろう。

 

一番ビビってるのはお前なんじゃないのか?」

 

 

 

跡部は亜久津を挑発した。

 

その時、背後から銃声が響いた。

 

 

 

「悪いな、そいつは俺の敵なんだよ。」

 

亜久津の遺体に壇は尻餅をついて後ずさった。

 

 

「何で・・・・。」

 

壇の額にも銃弾が減り込んだ。

 

目を開いたままの壇を跡部は見つめていた。

 

 

 

「宍戸、久しぶりだな。」

 

 

宍戸の方へと振り向き自分の武器を手に取った。

 

跡部の武器はエアガン。

 

宍戸の持つショットガンに敵うはずがなかった。

 

 

「その武器、お前のじゃないな・・・。

 

お前は殺したのか、殺して武器を手に入れたのか?」

 

 

「そうだな、生き残るためにはあんなナイフじゃ生きて帰れないからな。

 

人っていうのは結局自分以外を愛せないんだよ。

 

千石がそう教えてくれた。

 

アイツは人に愛されたがったが決して人を愛さなかった。

 

だからあんな軽い男を演じてたんだろうな。」

 

 

 

 

宍戸は跡部に近付き始めた。

 

 

 

 

「確かにお前は強かった。

 

テニスでも勉強でも俺よりも出来た。

 

でもお前にはないものを俺は持っていた。

 

それがこのゲームのルールだ。」