子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

Battle.33  ピエタの聖母

 

 

 

 

 

 

 

 

 

血だらけの仲間に俺は動揺していた。

 

何よりも人が人を殺すところを始めて見たからだろうか。

 

 

「跡部くん・・・。」

 

 

千石の声がこれが現実だと俺に訴えかけてくる様に聞えた。

 

 

「何処にいったんだろうね、忍足くんに向日くんは・・・。」

 

 

千石は自分のカッターを手に森の中を歩き周っていた。

 

 

「お前は・・・千石?」

 

 

「宍戸くん、君も人を沢山殺したんだろう?

 

だったら俺も殺してよ・・・。

 

俺があんな状態に戻る前に俺を殺してよ。」

 

 

涙をポロポロと流しながら宍戸に縋り付いた。

 

 

 

 

「なっ侑士、千石を入れて面白い事になっただろ。」

 

 

 

クスクスという笑いを抑えた声で向日は言う。

 

木の上からその光景を見た忍足は向日の後頭部を見ていた。

 

 

 

「人の中に隠れていた闇が出てきただろう。

 

あんなに明るくって軽い千石があんな風に殺し合うなんてね。」

 

 

 

 

好きだったんだよ。

 

俺の中ではあの人が好きだったんだ・・・。

 

 

 

 

 

「岳人、人は誰でも闇を持ってるんやで。

 

誰でもな・・・・・。

 

それはお前でも俺でも誰でも・・・・。」

 

 

 

 

 

髪を撫でてくれた優しい手は間違いではなかったし。

 

俺の事を愛していてくれた気がする・・・。

 

俺が死んだら悲しんでくれるのかな?

 

息子の遺体の前で悲しむ聖母は何を考えていたのだろうね。

 

自分の子ではない子供を愛せたのかな。

 

ただ人の死を悲しんだのかな。

 

 

 

 

 

「清純・・・。

 

ごめんなさい、私はもう何もしてあげられないわ・・・。」

 

 

 

 

 

「俺を殺してくれよ、もう殺して・・・。」

 

 

千石は宍戸の前に崩れ落ちた。

 

 

「言われなくとも殺すつもりだ。

 

こは弱い奴では生き残れないんだよ、千石。」

 

 

ショットガンを額に当てると千石は薄ら笑いを浮かべながら言う。

 

 

「これで俺は自由になれるのかもしれない。」

 

涙を流して言った。

 

 

「本当は人を殺す事が怖かったんだ。

 

俺の殺した仲間たち、全て・・・・。

 

その全ての人には悲しむ人がいるんだ。

 

殺していい人なんていないんだ・・・・。」

 

 

 

 

 

「そうだな、千石・・・。

 

でもな、これに勝たないといけない人間もいるんだよ。」