子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

Battle.32 夜は更けて

 

 

 

 

 

「跡部くん、何で今回の大会には日数制限がないのか知ってる?」

 

 

 

千石は朝焼けの中で跡部に話しかけた。

 

朝焼けは濃い青で美しく、昨日の出来事を忘れそうになりそうになる。

 

 

 

「時間までに1人になってないと全員死ぬんだよ。

 

政府も考えたんだよ、去年の参加者全員が死んでしまったから。」

 

 

「何故、そんな事を知っているんだ?」

 

 

千石は丁度いい大きさの岩に座った。

 

 

「何故ってそりゃあ俺の昔の母親が政府の関係者だったからだよ。

 

あの人、自分の子供の事だけ考えてた。

 

他人なんてどうでもいいみたいな感じでね・・・。」

 

 

 

「お前の今の母親って血が繋がってないのか?」

 

 

「違うよ、俺と姉ちゃんの母親は愛人なんだ、元ね。」

 

 

跡部は千石に背を向けて太陽に目を向けた。

 

 

「あの人は政府でもエリートだったんだって。

 

でも仕事が忙しくって子供、作らなかったんだ。

 

それで父さんは愛人に子供を産ませた・・・。

 

それが俺たち・・・。」

 

 

 

鳥のさえずりが聞えてきて一時の平和を感じる。

 

 

 

「昔、その人に殺されそうになったんだよね・・・。

 

それが父さんにバレて以来、その人には会ってないけど。

 

昔の資料が俺の家に残っていたんだ。

 

それを呼んでいたからこんなにも詳しくなってしまったんだろうね・・。」

 

 

 

跡部は深い溜息の後に言う。

 

 

 

「お前の家は少々複雑らしいな・・・。」

 

 

 

「そうかな?

 

でもその後は血の繋がった両親と姉と幸せだよ。」

 

 

 

千石は立ち上がり小屋の方へと向かった。

 

 

 

「・・・でもね、それで人の幸せは人の不幸の上に

 

成り立っているって気付いたんだよ。

 

誰かの犠牲無しには人は生きられないんだ。

 

動物だってそうだ。

 

きてるって事はそういう事なんだよね・・・・。」

 

 

 

跡部が振り向くと千石の姿が見えなくなっていた。

 

 

 

「千石?」

 

 

 

 

人を殺す事なんて刺し殺す事なんて容易い事だ。

 

ただそれは同時に自分が変わってしまう事を覚悟しないといけない。

 

 

 

 

「ごめんね、気持ち良さそうに眠っているのに・・・。」

 

 

 

グシャっと言う音が千石の耳に届いた。

 

顔が真っ赤に染まってしまった。

 

 

 

「俺は勝ちたいんだ・・・。誰にも殺されたくない・・・・。

 

俺は大切な人には殺されたくはないんだ。」

 

 

 

 

人は簡単に出来ているんだよ。

 

足りないものは他人から奪い足せば生き延びれるんだ。

 

それが他人の物であっても・・・。

 

他人の死なんて誰も何とも思わないんだ・・・。

 

もしも大切な誰かが僕を殺して他の人にソレをあげるなんて許せないから・・・。

 

だから俺は戦っているんだ・・・。

 

負けたら、彼女にも負ける事になる・・・・。

 

だから俺は戦っている。

 

 

 

 

「千石・・・。」

 

 

 

「ごめんね、跡部くん。

 

俺の事、仲間に入れてくれたのに・・・・。」

 

 

 

 小屋の中には何度も刺された死体が転がっていた。

 

 

 

 

 

「・・・でもね・・・。

 

俺は正しい事をしてるんだ・・・。

 

他人の不幸なくして俺の幸せはやってこないんだから・・・。」

 

 

 

「千石・・・。」

 

 

 

「忍足くんと向日くんには逃げられちゃった・・・。

 

探しに行って来るから、跡部くんは逃げなよ・・・。

 

ここにはもう何も残ってないから。」

 

 

 

 

フラフラと千石は跡部の隣を抜けて小屋の外へと向かった。

 

 

 

 

「俺は何処かであの人を求めていたのかも知れない。

 

ずっと大好きだった母さんだったから・・・。

 

何処かで愛して欲しかったのかも知れない・・・・。」