子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Battle.26 応えてくれますか

 

 

 

 

 

「リョーマくん・・・。」

 

 

 

あれから何時間過ぎただろうか、

 

リョーマくんと約束した場所に戻ってきました。

 

色々あって戻ってくるのが遅くなったけど

 

リョーマくんに手向ける花を摘んできました。

 

爆発音がした時は涙が出なかった、大切に思ってる人が死んだ音のはずなのに。

 

死亡者が発表されるまでリョーマくんは生きていると

 

何処かで信じていたのかもしれません。

 

耳から離れないあの音が離れない。

 

きっとリョーマくんの身体はボロボロに成っているかもしれない・・・。

 

でも私は約束を守るために此処まで来たんだって自分に言い聞かせています。

 

 

 

重いシャッターを精一杯の力で開けた。

 

 

 

 

「リョーマくん・・・。」

 

 

 

 

 

静めた声でリョーマくんを呼んだ、でもやっぱり返事は無かった。

 

氷帝の鳳さんが首輪を外して逃亡したと知ってやっぱり何処かで

 

リョーマくんが生きていてくれるんじゃないかと期待していたんだと思います。

 

 

 

 

 

 

「・・・リョーマくん、お花摘んで来たの。」

 

 

 

現在、午後6時11分、外が夕暮れ色の染まってきた。

 

 

「ごめんね、凄く待たせちゃって。」

 

 

倉庫の中は血の臭いが充満しています、リョーマくんの血の臭いだと思うと

 

なんだか恐怖よりも悲しみが強くなります。

 

 

 

「・・・リョーマくん?」

 

 

 

 

リョーマくんのジャージが見えたと同時にリョーマくんの側に誰かがしゃがんで

 

いるのが見えました。黒い影で私の方を見ています。

 

 

 

 

「だっ・・・・誰?」

 

 

 

 

後ずらりをしながらも私は精一杯に声を張り上げました。

 

 

 

 

「何だ、青学の女子じゃん。」

 

 

 

 

オカッパ頭の男の子でした。

 

 

 

 

「お前、コイツの事殺したの?」

 

 

 

 

私の額には汗が滲んでいました、開いたシャッターから入る夕日が

 

逆行になって彼の顔が見えなかった。

 

 

 

 

「こいつ首輪で爆発したのに首が繋がってるんだぜ。

 

政府も考えてんだな、こんなに酷い殺し方するなんてな。」

 

 

 

 

デイバッグの中から必死に自分の武器を探しました。

 

やっとの思いで掴んだ武器は瓶に入っている何かでした。

 

 

 

 

「ここで何があったか知らんけどもアンタは殺される運命や。

 

覚悟しといた方がいいで・・・。」

 

 

 

 

背後からまた声がしました。

 

低い男の人の声です、関西弁のイントネーションには聞き覚えがありました。

 

 

 

 

「・・・アンタ、こいつの事好きやったって・・・。

 

なのに酷いな、こんな所に放置するなんて・・・。」

 

 

 

 

私は後ろにいる人に瓶を投げつけました。

 

でも瓶は大きく外れて倉庫の中に保管されていた物に当たりました。

 

それと同時におかっぱ頭の少年のナイフが私の胸を貫きました。

 

 

 

 

 

「・・・侑士、大丈夫かよ・・・・。」

 

 

 

「あぁ・・・平気や・・・・。」

 

 

 

「・・・おい、これ火炎瓶だぜ。

 

逃げないと焼け死ぬぜ。」

 

 

 

 

微かに残る意識の中で2人の会話が聞えました。

 

確かに倉庫の中が赤く染まっています。

 

それはけして夕日の色なんかではなくて・・・・。

 

 

 

 

「侑士、もたもたしてると先行ってるぜ。」

 

 

 

 

私はこのまま死ぬんだと思いました。

 

 

 

 

「自分、何で花握ってるん?

 

コイツに手向けに来たんか・・・・。」

 

 

 

 

彼は私の手かた花を抜き取りリョーマくんの身体にそっと乗せていました。

 

 

 

 

 

「ゴメンな、此処は戦場なんや。

 

助けてやる事は出来へん、最後に願い事聞いたるから・・・。」

 

 

 

 

 

私は振絞る様な声で言いました。

 

 

 

 

 

「・・・リョ、マくんの・・・隣に連れてって・・・。」

 

 

 

彼は切なそうな顔をしていました。

 

彼は何故私の願いなんて聞いたのでしょうか・・・。

 

彼は私を担いでリョーマくんの隣に寝かせました。

 

 

 

 

 

「手を・・・繋が・・て・・欲しいの・・・。」

 

 

 

 

 

私の手と彼の手を握らせると言う。

 

 

 

「これでええのか?」

 

 

 

ゆっくりと私は頷いた。

 

 

 

「このままだと自分は苦しんで死ぬ事になるわ。

 

だから、このナイフで・・・・。」

 

 

 

「・・・私は・・・苦し・・みな・・がら死にたいの・・・。

 

リョーマくん・・・と・・・同じ様に・・・・。」

 

 

 

 

リョーマくんの顔は眠ってるみたいに綺麗だった。

 

私はこのゲームに感謝しているのかも知れない。

 

だって私はきっとあの日常の中じゃリョーマくんと話す事さえままならなかった。

 

手塚先輩が言ってた、やっと至福を得たと。

 

私もやっと至福を得たのかもしれない・・・。

 

 

 

 

リョーマくんは応えてくれますか?

 

 

 

 

私が今、貴方に告白したら・・・応えてくれますか?

 

 

 

 

火が熱くて何も考えられなくなってきました。

 

 

「少しだけ、自分等が羨ましいわ。」

 

 

彼は外に行ってしまった。

 

何故か涙が出ました。

 

きっとリョーマくんの隣に居るからだと思います。

 

 

 

 

 

ごめんね、リョーマくん。

 

最後まで迷惑かけて・・・・・。