子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

 

 

 

Battle.23 逃げているのは何の為?

 

 

 

 

 

 

 

 

『現在、生き残っている生徒は直ちに出発地点の

 

K地点の学校にお戻り下さい。』

 

 

 

 

段々と生徒達が戻ってきた、その中には負傷者も含まれている。

 

 

 

「・・・すみません、遅れてしまって。」

 

 

幸村は警備兵に軽く挨拶をした。

 

 

 

 

『結構、残ってるね。

 

でも俺と出会った奴は居ないね。』

 

 

 

 

教室の中には血の臭いが充満していた。

 

中には出た時よりも人数の減っていたが、何とも言えない雰囲気が漂っていた。

 

幸村は一瞬で昨日の記憶が蘇った。

 

周りの生徒は幸村を睨みつけていた。

 

 

 

「・・・・そうか、君たちも僕が憎いのかい?

 

僕が此処に来なくても君たちは死ぬ運命だったのにね・・・。

 

何でだい、不二・・・。」

 

 

 

不二周助は体温を感じさせない瞳をしていた。

 

 

 

 

「・・・幸村・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

“正直自分でもびっくりしている、だってこんな大胆な行動に出るなんて

 

俺の中ではありえない事だ。”

 

 

 

 

 

鳳は森の中を走っていた。

 

首輪を壊した時の恐怖と逃げ出そうとした時の決意だけで鳳は行動していた。

 

鳳は息切れしながらも止まる事も出来ずにいた。

 

放送がだんだんと鳳を追い詰める内容になって来たからだ。

 

 

 

 

『“残り1人です。”

 

今から反逆者の捜索、及び殺害を始めます。』

 

 

 

 

 

「はぁはぁ・・・はぁ・・・・。」

 

 

 

 

鳳は島の端、C地点に来ていた。

 

此処は氷帝の先輩と待ち合わせをしていた場所でもあった。

 

 

 

 

「・・・はぁ・・・。森の中の方が見つからないかな・・・。

 

もここから泳いで行けば・・・時間は稼げる・・・

 

樺地も助かる可能性が高くなるかも知れない・・・。」

 

 

 

 

 

日吉を非難した自分が恥ずかしいと心底思っていた。

 

自分のエゴで日吉を非難するなんて自分がまるで正しいかの様に

 

考えていたのか思うと何かをしないと落ち着かない。

 

自分は殺し合いに参加してはいけない気がした。

 

 

 

俺は生き残る資格はないと・・・だから・・・樺地には生きて欲しい。

 

俺の事を責めなかった樺地をどうか生き残らせたい。

 

俺のできる最高の事はこれだけだ・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「幸村・・・お前はどう思うんだ?

 

この状況を・・・。

 

お前は人を殺す事に何も感じないのか?

 

僕は感じないね、もう感じる事なんてないよ。」

 

 

 

不二は教室の中心で布に覆われた弟達の遺体を見つめて言った。

 

 

 

「・・・もう何も感じないんだよ、幸村。

 

大切な人を失ってしまって・・・僕には憎しみしか感じなくなってしまったんだ。」

 

 

 

 

幸村は多くの眼に見つめられながらも平然と教室の隅に座った。

 

 

 

 

「俺にも目的があるんだ、悪いけど負けられない。

 

でもね、弱いのがいけないんだよ。

 

強かったら此処にいる全員で掛かれば俺なんて簡単に殺せるだろう?」

 

 

 

 

 

教室の中で幸村は立海のメンバーを探した。

 

 

 

「・・・丸井にジャッカル、柳生に柳も・・・生きてたんだ・・・。

 

仁王は俺のために死んでくれたのにね・・・。」

 

 

 

 

声を掛けられた4人はお互いを見てから幸村に視線を向けた。

 

 

 

 

「・・・仁王くんを殺したのですか、幸村くん。」

 

 

柳生の声が静かに響いた。

 

その声は怯えている様でもあり、悲しんでいる様にも聞えた。

 

 

 

「・・・仁王は俺の目の前で自殺した・・・。

 

理由は知らないけどな・・・自殺した・・・。

 

俺の目的は仁王には理解してもらえたみたいだしね。」

 

 

 

 

 

「・・・命の恩人ですら、殺すのかよ・・・。」

 

 

丸井の顔はものすごい形相になっていた。

 

 

 

「・・・仁王は自殺したと言っただろう。

 

でも眉間に銃を突きつけるなんて変わった自殺の仕方だよね。

 

普通はこめかみに当てるものなのに・・・。

 

まぁ彼なりに自殺に見えない様に工夫したんだろうね・・・。

 

俺がアドバイスしてあげたから・・・。」

 

 

 

幸村の精一杯のウソだった。

 

確かに幸村は仁王を殺そうとしたがまさか自殺するとは思わなかった。

 

仁王は人の死に敏感なだけに幸村は自分自身が一番驚いていた。

 

 

 

 

「でも自殺ってバレて、また禁止区域が指定されたのは想定の範囲外だった。

 

これでまた弱者が爆弾の餌食になるのかと思うと笑えてくるよ。

 

せっかく全員俺が殺してやろうと思ってたのに。」

 

 

 

 

その遣り取りを聞いていた宍戸は小さく拳を握った。

 

 

 

『“ターゲット、氷帝学園、鳳長太郎。”』

 

 

鳳の名前が教室内に響いた。

 

 

「・・・鳳。」

 

 

跡部と芥川も教室にが来ていたが、宍戸の側には行けなかった。

 

樺地も跡部や宍戸、忍足達とは離れた場所にいた。

 

 

 

 

 

 

 

「マジでヤバいかも知れない・・・。

 

樺地、生き残ってくれ。

 

お前なら生き残る資格がある・・・。

 

俺みたいに人を疑う事を知らない、綺麗なお前なら

 

このゲームに乗ってもお前は綺麗なままだから。」

 

 

 

 

 

 

『鳳長太郎、捕獲、射殺しました。』

 

 

 

 

 

 

 

「・・・長太郎・・・・。」

 

 

宍戸は小さく呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「諸君、それではゲームを再開する。

 

現在、午後4時50分。」