子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

 

 

 

 

 

Battle.20  綺麗な言い訳、汚い心。

 

 

 

 

「日吉はきっと怖かったんだ、俺に見たいに・・。

 

でも日吉は俺以上に強いと思う、精神的にも肉体的にも。

 

でも・・・俺みたいに馬鹿じゃないから、日吉は。

 

だから来なかったんだ、日吉が来ても全員で帰れる訳じゃないからね。

 

俺って浅墓だなって思った。

 

現に樺地に止められなかったら先輩達の元へ一目散で向かってたよ。」

 

 

 

樺地は森の奥で見つけたベンチに腰掛けていた。

 

テーブルも一緒に付いていてまるで公園に来たみたいだ。

 

 

 

 

「何でだろう、あんなに感情的になってたのに・・・。

 

今じゃ俺が間違ってたって素直に言えるよ。」

 

 

 

 

 

 

 

「樺地、どうしてるんだろうな・・・。」

 

 

 

 

現在8時20分、天候晴れ。

 

 

 

 

「・・・跡部が弱音?」

 

 

慈郎は目を丸くして跡部を指差した。

 

 

 

そんなんじゃねぇーが、どうしているかってな・・・。

 

何時もなら完璧に俺の後ろに立ってるのによ・・・。

 

居なくなると寂しいもんだな。」

 

 

 

宍戸が居なくなった後2人は廃病院に向かった。

 

支給されていた地図によると東南の方にある様だ。

 

慈郎の傷は浅かったが可能しかけていたので跡部は急いでいた。

 

 

 

「跡部、俺の傷は治ったけど・・・。

 

宍戸はまだ・・・・。」

 

 

「あぁ、宍戸は・・・でもアイツにも訳があるはずだ。」

 

 

 

仲間の異変を受け入れられずにいた。

 

 

 

薬品の臭いってキツいんだね、跡部。

 

俺、ほとんど病院って行った事ないから気付かなかった。」

 

 

 

辺りは割れた瓶や放置された注射針が大量に落ちていた。

 

 

 

此処の病院も昔は人のために作られたんだろうな・・・。

 

なのに、こんな状態になるとは・・・・。」

 

 

 

小さい島とはいえ此処に辿り付くまでに沢山の廃屋や潰れた店を見てきた。

 

此処の住民は何処にいったのか。

 

そんな事が跡部の頭を駆け巡る。

 

 

 

 

「慈郎、昔話聞きたいか?」

 

 

 

 

跡部の突然な申し出に慈郎は驚いたが素直に受けた。

 

慈郎の応急手当は完璧だが夜は寝ていないので

 

激しい行動も避けたかったからだ。

 

 

 

「昔な、・・・あれは4年前だったかな・・・。

 

俺の家クラスではBRってのは免除にはならないらしいが

 

俺の顔見知りの男、政界に勤める男の息子なんだが。

 

そいつが俺はBRが行われた現場に行った事があると言っていたのを覚えている。

 

その頃は俺もBRなんて小説の世界の事だと思っていたが

 

その息子が体験した話ってのを俺は聞いたんだ。

 

もちろん、作り話って決め付けてだけどな。」

 

 

 

 

 

 

そこは森しか無かった。

 

只、木、木、木、の道が続いていた。

 

でもそんな道を抜けると時折、高いビルや廃屋を見つけられる。

 

中には食料もあったし、死体がある事もあった。

 

死体の下には白骨があった、もちろん人間の・・・・。

 

あそこは元々、本土とは掛け離れていた。

 

独自の文化を持ち、そして独自の言葉で話していたが

 

現代科学の進歩であの島からは一人一人人口が減っていった。

 

島に渡る船が増えた事も原因の一つに上げられていた。

 

そんな中で豊かな森を削り製作の手が向けられた。

 

この島ごとテーマパークにする計画が持ち上げられたのだ。

 

まだ荒されていない土地で自然と共存できるテーマパークは

 

淡々と進められていた。

 

その開発の手始めに病院やビルを建てた、住民からの非難もあったが

 

病院を建てた事で住民の3分の2は移住反対をしなくなった。

 

段々と開発が進む中で一人の男がこの島の外れにある小屋に身を隠した。何年にも渡って。

 

 

 

 

 

 

「それで、その男が白骨死体だったって事?」

 

 

 

「あぁ、でもな俺の話したいのはそこじゃない、

 

宍戸の兄貴がそのゲームに参加していたらしい・・・。

 

今から4年前だ、丁度宍戸が転校してきた年だよな。

 

それにあの息子は淡々と死体の特徴を話して行った。」

 

 

 

 

その部屋に生き残った男が居たんだ、そう宍戸とかいったっけかな?

 

長髪の男、生意気に俺にナイフを向けるもんだから銃で殺してやった。

 

その時の顔は笑えたな、人生で一番笑えた、退屈しのぎにはなったよ。

 

死体は内密に離れた小島に埋められた、半径5メートルもない島だ。

 

俺を楽しませてくれたから特別に良い墓にしてやったよ。

 

 

 

 

 

「そんな・・・政府の人間に・・・。」

 

 

口を押さえて俯く慈郎は少し涙ぐんでいた。

 

 

「しかも宍戸の・・・。」

 

 

 

「あぁ、宍戸の兄貴が被害者だ。

 

最後の一人・・・・宍戸の兄貴ともう一人が残っていたんだ。

 

白骨死体のある場所はそうとうの外れの位置にあったんだろう。

 

それで首のセンサーが反応しなかったんだ。

 

だから死んでいないのに死んだ事に成ったのだろう。」

 

 

 

 

「宍戸・・・復習するつもりなのかな?」

 

 

 

「そうかもな、でも俺は止められない・・・。

 

アイツの為でも俺は・・・・。」

 

 

 

 

 

 

綺麗な言い訳しか俺には言えない。

 

この事を宍戸に伝えたのは俺なのだから。

 

もしあの時、俺が・・・俺が宍戸に言わなければ・・・・。

 

宍戸・・・お前の兄貴、BRに参加してたのか?

 

今でも宍戸の顔が忘れられない・・・・。

 

俺は汚いな、自分で責任すらとれないんだから。