子供達の聖戦

The Prince of Tennis in Battle Royale 〜

 

 

 

 

 

 

Battle.17 雨に濡れた瞳

 

 

 

ぐちゃぐちゃな土に塗れて東方は見つかった。

 

雨が少し弱まったから俺は洞窟から出て来た。

 

一番の親友であり、ダブルスのパートナーだった俺がお前を

 

見つけるなんて皮肉なもんだな。

 

 

 

 

南は俯けに倒れている東方を仰向けに直した。

 

東方には目立った外傷はないが雨に打たれ続けたせいか冷たくなっていた。

 

 

「東方、なんで雨宿りしなかったんだよ。」

 

 

震える声で南は東方に話掛けた。

 

 

 

午前四時、完全に雨が上がった。

 

ぐしゃっという音と共に低い声が響いた。

 

 

「自殺か、それともお前がやったのか。」

 

 

 

あいつは確か、氷帝の宍戸だ。

 

そんな事を思いながら俺は呟いた。

 

 

 

「東方はそんなことしない。

 

ただ、こんな状況なのは・・・状況なのは・・・。」

 

 

 

宍戸は険しい顔のままで言う。

 

 

 

「そいつが弱いからだろう。

 

雨に打たれたくらいで・・・死ぬなんてな。」

 

 

 

「知ってたのか?宍戸。」

 

 

 

「あぁ、そいつが力尽きるところを俺は見ていたからな。」

 

 

 

俺は何も言えなかった。

 

だって彼の目はあまりにも体温を感じさせなかったから。

 

 

 

「そいつもお前も甘いんだよ。

 

ここは戦場だ、誰のことも頼ってはいけない。

 

だからだろう、精神力のない奴はなんの被害を受けずとも

 

こんな場所で死ぬんだ。」

 

 

 

宍戸は自分の手に持っているショットガンを南に向けた。

 

 

 

「何か最後に言いたい事は?」

 

 

 

「お前はこんなゲームに乗ってなんになると思ってるんだ?

 

こんな事してなんになるんだ。

 

俺達は普通に毎日を過ごしていただけのはずだ。

 

もし人を殺して帰ったとっしても・・・。

 

元の人生には戻らないんだよ。

 

帰っても誰もいない、誰も・・・いない・・・。

 

お前はそれでも人を殺すのか・・・・。」

 

 

 

宍戸はショットガンを南に放った。

 

真っ白な制服は真っ赤に染まり、パラパラと空弾が落ちていった。

 

 

 

「そんなの決まってるだろう、意味なんてない。

 

意味なんてないんだよ、意味なんて。

 

殺し合えといわれれば殺し合い、死ねと言われたら死ぬ。

 

それがルール、ルール。

 

政府の人間のルールなんだよ。」

 

 

 

宍戸は空を仰いだ。

 

 

 

「意味なんてないよ。意味なんてない。

 

兄貴も意味なんてなかったんだろう?」

 

 

 

宍戸はぐちゃぐちゃの地面を歩いていった。